●2パーセントの物価目標を実現するのは難しい
今回は、財政と金融、特に金融政策が非常に密接な関係にあるという点について、説明します。
前回説明したように、最終的に財政再建を進めるためには、社会保障を改革しないのであれば、消費税率を30パーセント程度にする必要があります。他方、仮にアベノミクスが2パーセントのインフレ率を達成し、デフレを脱却できたとすれば、25パーセント程度の消費税で済みます。
ただし問題は、財政との関係で、本当に2パーセントの物価目標が達成できるかということです。完全に不可能だというわけではないでしょうが、現実のデータを見ると非常に難しいことが分かります。
スライドに、CPI(コア)と呼ばれる消費者物価指数の推移を示しました。「コア」とは、生鮮食品を消費者物価から除いたものを指します。1985年から2015年までのコアCPIの動きを見て下さい。2017年に日本銀行が目標とするのは、2パーセントのラインです。このラインを超えているのは、1985年、89年の消費増税時、さらに湾岸戦争による原油価格の高騰で、消費者物価が跳ね上がった時の、3つの時期です。97年に消費税率を引き上げた時、2008年に原油価格が高騰した時にも、2パーセントのラインに近づいています。しかし、それ以外では、2パーセントのラインに近づいたことはありませんでした。
確かに、各国が2パーセントのインフレを目指していますから、これに呼応するように2パーセントのインフレ率を目指すというのは、金融政策としては非常に合理的でしょう。しかし、現実問題として、過去のデータから見る限り、2パーセントの物価目標を実現するのがいかに難しいか分かります。
●2016年9月、日本銀行は金融政策を大きく方向転換した
そこで、これまで金融政策としてどのようなものが行われてきたのか、整理してみましょう。「量的・質的金融緩和」として、2013年4月から2016年9月までの金融政策の流れをまとめました。
2013年4月、日本銀行の黒田東彦総裁は、マネタリーベースの量を2倍にすると発表します。バランスシート上、総額およそ50兆円を目標に長期国債を購入していくという金融政策が開始されました。しかし、なかなか物価目標に到達できないということで、2014年10月には、年間50兆円のペースで購入してきた長期国債のボリュームを、80兆円にすることが決定されます。さら...