日本の財政の未来
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
物価目標2パーセントを達成するには規制緩和も必要
日本の財政の未来(8)日銀の金融政策と物価目標
小黒一正(法政大学経済学部教授)
法政大学経済学部教授の小黒一正氏によれば、現実問題として、これまで日本がインフレ率2パーセントを達成できた時期は、ごく数回しかない。日銀は2013年以来、量的・質的金融緩和を続けてきたが、同時にサービスの分野における規制緩和も行わなければ、物価目標を達成することは難しいだろう。(全10話中第8話)
時間:10分34秒
収録日:2017年9月4日
追加日:2017年10月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●2パーセントの物価目標を実現するのは難しい


 今回は、財政と金融、特に金融政策が非常に密接な関係にあるという点について、説明します。

 前回説明したように、最終的に財政再建を進めるためには、社会保障を改革しないのであれば、消費税率を30パーセント程度にする必要があります。他方、仮にアベノミクスが2パーセントのインフレ率を達成し、デフレを脱却できたとすれば、25パーセント程度の消費税で済みます。

 ただし問題は、財政との関係で、本当に2パーセントの物価目標が達成できるかということです。完全に不可能だというわけではないでしょうが、現実のデータを見ると非常に難しいことが分かります。

 スライドに、CPI(コア)と呼ばれる消費者物価指数の推移を示しました。「コア」とは、生鮮食品を消費者物価から除いたものを指します。1985年から2015年までのコアCPIの動きを見て下さい。2017年に日本銀行が目標とするのは、2パーセントのラインです。このラインを超えているのは、1985年、89年の消費増税時、さらに湾岸戦争による原油価格の高騰で、消費者物価が跳ね上がった時の、3つの時期です。97年に消費税率を引き上げた時、2008年に原油価格が高騰した時にも、2パーセントのラインに近づいています。しかし、それ以外では、2パーセントのラインに近づいたことはありませんでした。

 確かに、各国が2パーセントのインフレを目指していますから、これに呼応するように2パーセントのインフレ率を目指すというのは、金融政策としては非常に合理的でしょう。しかし、現実問題として、過去のデータから見る限り、2パーセントの物価目標を実現するのがいかに難しいか分かります。


●2016年9月、日本銀行は金融政策を大きく方向転換した


 そこで、これまで金融政策としてどのようなものが行われてきたのか、整理してみましょう。「量的・質的金融緩和」として、2013年4月から2016年9月までの金融政策の流れをまとめました。

 2013年4月、日本銀行の黒田東彦総裁は、マネタリーベースの量を2倍にすると発表します。バランスシート上、総額およそ50兆円を目標に長期国債を購入していくという金融政策が開始されました。しかし、なかなか物価目標に到達できないということで、2014年10月には、年間50兆円のペースで購入してきた長期国債のボリュームを、80兆円にすることが決定されます。さら...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
日本の財政と金融問題の現状(1)財政赤字の何が問題か
日本の財政は本当に悪いのか?将来世代と金利の問題に迫る
木下康司
心と感情の進化(1)そもそも「心と感情」とは何なのか
「心と感情」とは何か、行動生態学から考える大事な問題
長谷川眞理子