●各世代の生涯の受益と負担の構造を表す、世代会計
今回は世代会計と公債の負担の関係について説明します。このスライドは、内閣府が平成17年度の年次経済財政報告で試算した、世代ごとの受益と負担の構造を示したものです。横軸には世代が書かれています。例えば、60歳以上では1943年以前に生まれた方々が、50歳代では1944年から53年に生まれた方々が含まれます。一番左側は、20歳未満を含む将来世代です。
例えば、60歳以上ですが、青い棒グラフと赤い棒グラフが2つあります。青い棒グラフは、60歳以上の世代が、生まれてから亡くなるまでの間に、政府から受け取る受益を示したものです。そこには、社会保障の年金や医療、介護、さらにそれまで受けてきた教育のベネフィットが足し合わされています。他方、下側の赤い棒グラフは、60歳以上の方々が過去に払ってきた、税金や社会保険料といった負担を全て足し合わせたものです。
青い棒グラフと赤い棒グラフの差が、折れ線グラフになっていますが、これは生涯で受け取る受益と、生涯に負担する税金や社会保障の差を示しています。例えば、60歳以上の方々では4,875万円の得になる一方で、20歳未満の将来世代は4,585万円の損をするということです。このように、各世代の生涯の受益と負担の構造を表したものを、世代会計と呼びます。
●将来世代が、およそ5,000万円損をする
前回の議論を踏まえて、世代会計がどのような意味を持つのか考えてみましょう。前回の資料をもう一度見て下さい。前回説明したように、公債は将来世代にとって負担になる可能性があります。ただし、親世代が例えば5,000万円の得をしたとしても、5,000万円の遺産を残せば、子世代の負担は相殺されるでしょう。これは「公債の中立命題」と呼ばれています。
では、公債と世代会計はどのような関係にあるのでしょうか。前回の公債発行・償却の図でいえば、60歳以上の方々がおよそ5,000万円得をしているということです。他方、およそ5,000万円損をするのは、将来世代です。60歳以上の方々からすれば、将来世代は孫の世代です。こうした世代会計の構図になっています。これは、そのほとんどが政府による借金と社会保障費に起因するものです。
もし、高齢者の方々が5,000万円得をしていたとしても、5,000万円の遺産を残すことができれば、孫の世代である将来世代の負担はなくなるでしょう...