日本の財政の未来
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
消費増税の先送りで将来世代の負担が拡大した
日本の財政の未来(6)世代会計に見る将来世代の負担
小黒一正(法政大学経済学部教授)
法政大学経済学部教授の小黒一正氏の試算によれば、2017年時点の世代会計では、20歳未満の将来世代は生涯で約8,000万円の損をする。消費増税を先送りにし、財政再建を遅らせていれば、さらにこの負担は拡大していくだろう。こうした現状を見据えて、財政再建に取り組む必要がある。(全10話中第6話)
時間:11分31秒
収録日:2017年9月4日
追加日:2017年10月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●各世代の生涯の受益と負担の構造を表す、世代会計


 今回は世代会計と公債の負担の関係について説明します。このスライドは、内閣府が平成17年度の年次経済財政報告で試算した、世代ごとの受益と負担の構造を示したものです。横軸には世代が書かれています。例えば、60歳以上では1943年以前に生まれた方々が、50歳代では1944年から53年に生まれた方々が含まれます。一番左側は、20歳未満を含む将来世代です。

 例えば、60歳以上ですが、青い棒グラフと赤い棒グラフが2つあります。青い棒グラフは、60歳以上の世代が、生まれてから亡くなるまでの間に、政府から受け取る受益を示したものです。そこには、社会保障の年金や医療、介護、さらにそれまで受けてきた教育のベネフィットが足し合わされています。他方、下側の赤い棒グラフは、60歳以上の方々が過去に払ってきた、税金や社会保険料といった負担を全て足し合わせたものです。

 青い棒グラフと赤い棒グラフの差が、折れ線グラフになっていますが、これは生涯で受け取る受益と、生涯に負担する税金や社会保障の差を示しています。例えば、60歳以上の方々では4,875万円の得になる一方で、20歳未満の将来世代は4,585万円の損をするということです。このように、各世代の生涯の受益と負担の構造を表したものを、世代会計と呼びます。


●将来世代が、およそ5,000万円損をする


 前回の議論を踏まえて、世代会計がどのような意味を持つのか考えてみましょう。前回の資料をもう一度見て下さい。前回説明したように、公債は将来世代にとって負担になる可能性があります。ただし、親世代が例えば5,000万円の得をしたとしても、5,000万円の遺産を残せば、子世代の負担は相殺されるでしょう。これは「公債の中立命題」と呼ばれています。

 では、公債と世代会計はどのような関係にあるのでしょうか。前回の公債発行・償却の図でいえば、60歳以上の方々がおよそ5,000万円得をしているということです。他方、およそ5,000万円損をするのは、将来世代です。60歳以上の方々からすれば、将来世代は孫の世代です。こうした世代会計の構図になっています。これは、そのほとんどが政府による借金と社会保障費に起因するものです。

 もし、高齢者の方々が5,000万円得をしていたとしても、5,000万円の遺産を残すことができれば、孫の世代である将来世代の負担はなくなるでしょう...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏