日本の財政の未来
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日本の財政の未来(2)債務残高とプライマリーバランス
政治と経済
小黒一正(法政大学経済学部教授)
法政大学経済学部教授の小黒一正氏が、債務残高のGDP比とプライマリーバランスの現状について解説する。2017年度の債務残高のGDP比は、戦時体制下の200パーセントという水準を超えている。プライマリーバランスもマイナス10.8兆円に達してしまった。税制の抜本改革によって、こうした状況を是正する必要がある。(全10話中第2話)
時間:10分24秒
収録日:2017年8月1日
追加日:2017年9月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●2017年の債務残高GDP比は、戦時中の水準を超えた


 今回は、政府債務残高がGDP比で過去どれぐらいのスピードで伸びてきたのかということと、そして、プライマリーバランス(基礎的財政収支)という概念について、説明します。プライマリーバランスは、財政再建の議論によく出てくる言葉です。

 まず、国の借金の残高が、どのように伸びてきたのかを示したグラフを見てください。このグラフは、1890年度から2017年度までの、政府債務残高のGDP比の推移を表しています。赤いラインがGDP比での債務残高の推移ですが、特徴的なことがあります。

 2017年の債務残高GDP比は、戦時下の債務状況を超える状況にあるのです。グラフの1945年頃を見てください。戦時体制下にあった日本は、軍事費を借金で賄うことによって、戦費を調達していました。そのため、政府の債務残高が、GDP比で200パーセントを超えました。その後、戦争が終わり、預金封鎖や急激なインフレーションによって、政府の債務はいったん、約50パーセント程度にまで縮小しました。さらに、1960年代には、もっと低い水準にまで縮小しています。

 これ以後しばらく、政府債務残高は50パーセント程度でしたが、2000年代に入ってからは急増しています。主な原因の1つは、社会保障費のコストを、基本的に借金で賄い続けているということにあります。もちろん、税収の水準が下落してきたことや、バブル後の対策として、公共事業を国債発行で賄ったことも、政府債務残高の急増に寄与しています。ただし、現在では社会保障費の増加が主要な原因として考えられるでしょう。このように、2017年の債務残高GDP比は、実は戦前の200パーセントを超える状況にまで膨らんできているのです。


●歳出と歳入の「ワニの口」


 なぜ、このような状況が生じてきたのでしょうか。国の一般会計における歳出と歳入を、昭和50年度(1975年)から平成29年度(2017年)まで見てみれば、その姿が分かります。グラフの赤いラインが国の一般会計の歳出で、平成29年度は97兆円です。他方、青いラインは税収を表しており、平成29年度では57兆円です。

 このグラフはよく「ワニの口」と呼ばれています。グラフの右側がワニの顔になっていて、赤いラインと青いラインがワニの上顎と下顎になっています。グラフの左側は尻尾で、ちょうどワニが口を開けているように見えます。このグラフでは、...

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