日本の財政政策の効果を評価する
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日本の財政政策とその効果を検証する(5)ジェンダー平等と反循環的な財政政策
宮本弘曉(一橋大学経済研究所教授)
世界の中でもジェンダーギャップが大きい日本だが、それを改善する糸口はどこにあるのだろうか。経済を刺激する財政政策はジェンダー平等の実現にもつながるのだが、より抜本的には、働き方の柔軟性が必要だ。日本がそれを実現するために乗り越えるべき雇用慣行の課題を解説する。(全6話中第5話)
時間:10分33秒
収録日:2023年12月14日
追加日:2024年4月4日
≪全文≫

●財政政策がジェンダーギャップの解消に寄与する


 そういった中で、女性のエンパワーメントを今後も促進していく必要があるわけです。では、どうやったら促進できるのかということですが、女性の就労インセンティブを高めるような社会制度の整備や改革が重要になります。それから、ジェンダー平等がカルチャーとして根づいていく努力が必要です。

 女性の活躍を促進するために着目されているものが財政政策です。

 実は、さまざまな財政措置が、女性の就業を促進すると考えられています。例えば、保育所に対してお金をかけるといった政策が、女性の就労を促進するのではないかと考えられています。

 他の国では、「ジェンダー予算(ジェンダーバジェット)」という、男性と女性のジェンダーギャップを解消するように予算をしっかり取りましょうというようなことをやっている国もあります。

 最近、注目されているのが「景気を刺激する、経済を安定化させるための財政政策」で、これは「反循環的な財政政策」とも呼ばれます。この財政政策も、ただ単に景気を刺激するだけではなくて、ジェンダー平等を実現する、ジェンダーギャップを改善する役割を持っているといわれています。

 どういうことかというと、景気刺激型の財政政策は雇用を増加させるわけですが、男性の雇用よりも女性の雇用を大きく増やす。その結果として、男性と女性のジェンダーギャップを縮めることが、最近の研究で明らかになっております。

 なぜ、景気刺激のための財政出動がジェンダーギャップを縮めるのかというと、いくつか理由があるのですが、1つは、男性と女性で雇用形態が違うことが効いています。先ほど申し上げましたように、日本では、女性はパートタイマーであるとか、非正社員として働かれている方が多い一方、男性はフルタイムで正社員として働かれている方が多いわけです。

 景気が悪くなった場合、この状態をなんとかしようと、政府が財政出動します。これによって、経済が下支えされ、需要が喚起されるわけです。

 そのときに企業はどういう反応をするかというと、需要が喚起されるので、生産を増やそうとします。生産を増やすためには雇用を増やす必要があるわけですが、先行きが良く見えない中で、フルタイムの雇用を増やせるかというと、なかなか踏み切ることができません。まずは、パートタイムの方を増やそ...

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