コロナパンデミックと闘う世界と今後の課題
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
コロナの影響で世界的に財政の累積負債は急増、最悪は日本
コロナパンデミックと闘う世界と今後の課題(2)感染防止と経済政策
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
感染拡大を抑えるにはワクチンの開発が不可欠だが、それには長い時間がかかる。その間に経済に深刻なダメージが出ないように、各国はさまざまな金融政策を採っている。アメリカの連邦準備制度やEUは積極的な財政支援策に乗り出しているが、各国の累積債務の増加は深刻な水準にあり、特に日本の債務は世界最悪の水準になることが予想されている。(全12話中第2話)
時間:6分36秒
収録日:2020年7月16日
追加日:2020年8月25日
≪全文≫

●感染拡大防止と経済の沈滞というトレードオフ


 有効なワクチンの開発は、最も重要な対策の一つですが、ワクチン開発には多大な時間がかかります。ワクチン開発が進み普及するまでは、地球社会はソーシャルディスタンスを保って生活しなければならず、あるいはより強力なロックダウンという手段を通じて感染を抑制しなければなりません。そのためには、外出自粛やあるいは自己隔離が必要となります。各国で外出規制は行われていますが、さらに休業の要請や指令によって、最終的には都市封鎖まで行うことも必要になるかもしれません。こうした対策を取ると、経済活動は縮小するだけではなく停止するので、所得が減り売上が減りGDPが縮小し、非常に大きなコストが発生します。

 こうした強力な対策が必要となるのは、ようするに医療崩壊を防ぐためです。医療システムには一定のキャパシティがあるので、そのキャパシティを超えて感染者が発生すると、医療の処理能力を上回り、医療崩壊につながります。こうなると、イタリアのように、多くの死者が出てしまいます。こうした事態を引き起こさないようにするためには、感染爆発を起こさないようにコントロールすることが非常に重要となります。つまり、感染カーブのピークを引き伸ばすのです。

 ただ、ピークを引き伸ばしたとしても、積分すると同じ面積になるので、経済には同じだけマイナスの影響を持つことになります。この感染抑制に乗り出すと不況が深刻化するというトレードオフは、大きな問題です。どのようにして不況の深刻化を軽減するかが重要で、そのために金融財政政策を考えなければならないのです。

●新型コロナによる混乱を避けるべき積極的な金融政策へ


 2020年3月にヨーロッパやアメリカで感染が拡大した際に、投資家たちは強い恐怖を感じて、一斉にリスク資産から安全資産に資産を移そうとしたために、パニック状態となりました。その結果、金融システムが非常に不安定になることが予想されたのですが、世界各国の中央銀行が見事に協力して、金融機関は信用供与など乗り出しました。また、多くの国で資金流出によって通貨価値が下落したのですが、これに対応して連邦準備制度(FRB)はドルの流動性を高める政策に積極的に取り組みました。

 金融機関は、営業停止によって収入が激減した人々のために、流動性を増やすことに関して大きな役割を果たしま...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎