コロナパンデミックと闘う世界と今後の課題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ペストがキリスト教を揺るがしルネサンスとルターの時代に
コロナパンデミックと闘う世界と今後の課題(7)ペストと世界の大変化
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
歴史を紐解いてみると、現在の新型コロナウイルスと似た感染症として14世紀のペストと100年前のスペイン風邪が挙げられる。ペストは都市化の進展とともに現れ、主にヨーロッパで猛威を振るった。その結果、農奴制の解体やカトリック教会から自律したプロテスタントの出現など社会に大きな影響がもたらされた。また、その後のルネサンスの要因になったともいわれており、感染症は社会に変革をもたらしたといえるのだ。(全12話中第7話)
時間:6分34秒
収録日:2020年7月16日
追加日:2020年8月30日
≪全文≫

●14世紀のペストの流行は大きな被害をもたらした


 次に、人類の過去の経験を振り返ってみましょう。まず、14世紀にヨーロッパを中心に地球上で猛威を振るったペストについてお話しします。次に、100年ほど前に4000万人の死亡者を出したスペイン風邪の経験を振り返ってみたいと思います。

 ペストに関しては、実は中世の時代に世界各地で大小の流行が起こっていましたが、14世紀にヨーロッパで起きた大流行が重大な影響を及ぼしたとして、研究上注目されているのです。感染がそこまで拡大した理由に関しては諸説ありますが、農業革命が大きな影響を及ぼしたといわれています。11世紀頃から水車が用いられるようになったことで生産性が上昇し、食糧の大幅な増産に成功しました。この結果、今のイギリス、フランス、ドイツなどの地域で人口が急激に増大しました。ところが、人口が増加し過ぎることで、食糧不足となりました。14世紀の中頃に異常低温と長雨の時期があったようで、この時に大変な食糧危機に陥りました。人々が飢饉で非常に弱っているところにペストによる更なる打撃が加えられたのです。

 これを後押ししたのは、生産性向上に伴う都市化の進展だそうです。都市人口が非常に増加したため、ゴミが道路に投棄され、放置されるようになりました。また、排せつ物や肉の解体屑などが、強烈な悪臭を放つようになりました。これらは、ペストを媒介するネズミの絶好の繁殖場になるのです。加えて、農業革命が起きたため開墾ブームとなり、森林が急速に農地に転用されました。そのため、ネズミの天敵であった、ワシやタカ、キツネやオオカミといった肉食獣の数が減りました。そのため、ネズミが大発生したのです。このような条件が残念ながら重なって、ペストの感染が拡大する下地となったといわれています。

 ペストの流行は数十年間断続的に続きましたが、特に14世紀の中頃に猛威をふるい、当時ヨーロッパの人口の3分の1ほどが死に絶えたといわれています。ペストには腺ペスト、皮膚ペスト、肺ペストなどの種類がありますが、この時代に蔓延したのは腺ペストです。これに感染すると、皮膚が壊死して、皮下出血で黒く見えるので、「黒死病」と呼ばれました。


●ペストによる社会構造の大規模な転換


 この結果、非常に大規模な社会構造の変化が起きました。まず、感染拡大がひどかった農村部で農民が大量に死亡し...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓