コロナパンデミックと闘う世界と今後の課題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
世界的大変化の潮流からコロナパンデミック後の世界を考える
コロナパンデミックと闘う世界と今後の課題(9)アメリカ中心の戦後体制の変化
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
コロナパンデミックの影響を考えるにあたって、それ以前の国際状況の変化を正しく認識する必要がある。そこには大変化の潮流が4つあり、一つ目は、アメリカを中心とした戦後の政治経済体制が揺らぎつつあるということである。かつて日本が急成長した時にも、アメリカは経済的リーダーの役割を譲らなかった。しかし、度重なる戦争で疲弊したアメリカは、世界の警官役を降り始めており、世界の利益を超えて米中の対立へと至りつつある。(全12話中第9話)
時間:6分35秒
収録日:2020年7月16日
追加日:2020年9月2日
≪全文≫

●戦後体制の大変化とドル変動相場制への移行


 このように、さまざまな感染症の歴史を人類は経験してきています。これらの歴史的経験から、われわれは今何を学ぶべきか、皆さんと一緒に考えたいと思います。

 今回のコロナウイルスパンデミックが起きる直前の世界像を考える上で、4つの大変化の潮流があったと思います。1つは、第二次大戦後につくられた、いわゆる戦後体制が大きく変質していました。

 戦後体制は、1944年7月にニューハンプシャー州の片田舎のブレトンウッズという村に関係者が集まって、戦後の世界の設計について話し合ったところから始まりました。そこで、国際通貨基金(IMF)と国際復興開発銀行(IBRD)が創立されました。もっとも重要なことは、この戦後設計の中で、アメリカのドルを基軸通貨とする固定為替相場制をとったことです。その後、アメリカを中心に世界の軍事・政治・経済体制を立て直し、平和を維持し発展させることを目標として、パックス・アメリカーナと呼ばれる体制が構築されました。1945年10月24日に、国際連合の本部がニューヨークに建てられたことも象徴的ですよね。

 ところが、この体制が変質します。その分水嶺となったのが、1971年8月15日のいわゆるニクソンショックです。私は偶然この時、夏季講座のためにシカゴ大学に滞在していました。その日の夜に、今晩はニクソン大統領の特別声明が出るというので、みんなでテレビの前に集まりました。するとニクソン大統領はこういいました。8月15日は日本が降伏し終戦した記念すべき日だが、状況が変わった。現在、日本の対アメリカ輸出が伸びてきて、貿易赤字が拡大してきている。それまでは金の兌換制度に基づいて金で裏打ちしていたので、金のストックが急激に減少してしまうわけです。だから、日本が敗戦したこの日に兌換制を廃止すると宣言したのです。非常に強い印象が残っています。実際に廃止しましたが、なかなかうまくいきませんでした。


●レーガン政権による双子の赤字とプラザ合意


 その後、レーガン政権となりました。1980年代はレーガン政権という長期政権の時代でした。この政権下でも貿易赤字が拡大していました。そこでレーガン政権では、供給重視の政策で競争力を向上させることで赤字を減らすことを目指しました。しかし、減税すれば経済に力がつくという妙な理論に基づいていました。さらに、軍事費が...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
逆境に対峙する哲学(3)修行・物語・語りの転換
武士道に学ぶ自己訓育――幻想としての順境に抗するために
津崎良典
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(2)コンピュータの歴史
量子コンピュータの転機となった1990年代の発見とは何か
武田俊太郎