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世界最悪の感染拡大が進むアメリカの状況を確認する

コロナパンデミックと闘う世界と今後の課題(3)経済活動再開と第二波

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
コロナウイルス対策としての活動制限が各国の経済に与えた打撃は深刻だったため、各国政府は感染拡大が落ち着いてくると迅速に経済活動の再開に尽力した。しかし、その結果再度コロナウイルスの感染拡大が広まりつつあり、感染第二波への対応に各国政府は現在も追われている。島田晴雄氏が、経済活動の再開と感染第二波への対応に関して、さまざまな国の事例を紹介する。(全12話中第3話)
時間:09:34
収録日:2020/07/16
追加日:2020/08/28
キーワード:
≪全文≫

●各国の経済活動再開の取り組み


 こうした状況なので、世界各国は一刻も早く経済活動を再開しなければならないということで、さまざまな取り組みに着手しています。各国の具体的な取り組みに目を向けてみましょう。

 中国は2020年3月の上旬から生産活動を再開しました。武漢市では1月23日から全都市を封鎖しましたが、2か月半経過した4月8日に解除しました。それより前に、中国全土で生産活動は再開されて、国民はその後、自由に買い物、集会、旅行ができるようになりました。

 次に、韓国では2月下旬に宗教団体の集会がクラスターとなり、そこから急激に感染爆発が起きました。しかし、韓国はSARSの苦い経験から学び、疾病管理本部という、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)よりも強力な組織を作りました。この機関を中心に、非常に効率的な検査と強制隔離を徹底し、3月中旬には事実上収束させて、世界の成功例として注目されています。文在寅大統領の所属する与党はこの成果を強調して、選挙に大勝しました。

 また、欧州ではドイツが比較的優等生です。3月22日に全面休業要請を出しましたが、1か月ほどで段階的に解除していきました。ドイツでは1日の新規感染数が1000人以下という基準を一つ掲げました。加えて、1人の患者が何人の新たな患者を生み出すか示す、実効再生産数が1以下という基準も用いました。その結果、5月6日に国内全商店の営業を解禁しました。特にドイツで最も重要視されたのが、ブンデスリーガの再開でした。やはりサッカーはヨーロッパの国にとって非常に重要なようです。

 対して、イギリスでは集団免疫の獲得という方針を掲げて、ロックダウンの実施を遅らせていた結果、深刻な状況に陥りました。5月上旬の段階で、世界第二位の死者数を記録していました。この段階で32,000人が亡くなっていました。それでも、5月11日に段階的なロックダウンの解除に踏み切りました。イタリアでは感染爆発に伴う医療崩壊で危機的状況に陥りましたが、4月半ば~下旬から徐々にロックダウンを解除していきました。

 欧州全体に目を向けると、図1で示されたように、その後の感染はある程度コントロールされており、沈静化に向かっているといえます。7月の上旬段階では、特に感染拡大の第二波の兆候は観察されていません。

 また、日本では(2月)ダイアモンド・プリンセス号に停泊したことによって感染が急増しましたが、厚労省と厚労省傘下の各地域の保健所がクラスター追跡という方法論を確立し、しばらくはこれで対応できていました。ところが、3月中旬から急速に東京中心に感染者が増え始め、4月7日に緊急事態宣言が出されました。5月の連休に人々が出歩くと感染が拡大してしまうとして、ステイホーム週間などのさまざまな呼びかけがありました。日本国民はこの呼びかけに、自主的に協力しました。その結果新規感染が大きく減り、5月末には緊急事態宣言を解除し、それ以降経済活動の段階的な再開に踏み切っています。


●アメリカの感染者数は減る気配を見せない


 最後にアメリカに着目したいと思います。アメリカでは、3月上旬から感染者が急激に拡大し、4月には100万人、5月には170万人の感染者数となり、世界最悪の感染拡大を見せています。

 ドナルド・トランプ大統領は、おそらく大統領選挙しか眼中にないようで、大統領選挙中に不況になると困るために、早く経済活動を再開することの必要性を強調するばかりでした。こうした極端な姿勢に対して、CDCのレッドフィールド所長が議会で証言し、第二波の危険性が非常に高いと指摘したのですが、トランプ大統領は耳を貸しませんでした。5月11日の記事ですが、感染対策のアメリカの神様といわれているファウチ博士も、感染の急拡大に繋がるとして同じような警告を発しています。

 このようなやりとりを経て、ワシントン大学の研究チームが5月12日に、8月上旬までに死者数が14万人になるという推計を発表しました。当時の死者は数万人程度だったので、非常に過大な予測と思われましたが、7月中旬の時点で既に死者数は136000人となりました。このままいくと、8月には14万人を越すと思われます(編注:8月2日時点で15万人を超えました)。トランプ大統領の、再選に向けた前のめりの姿勢が、感染第二波をもたらす危険性が非常に大きいことは明白です。


●経済活動再開による揺り戻しと感染第二波


 このように世界各国が経済再開に踏み切りましたが、その結果人々の交流が増えるので、感染第二波と呼べる現象が起きるようになりました。

 中国の場合には5月11日に武漢市で6人の感染者が出ました。ちょうど全国人民代表大会の直前だったので、当局は迅速に対応しました。武漢市の全市民を検査するとして、1100万人の市民のうち900万人...
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