コロナ禍で揺れる世界経済の行方
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
バンドワゴン現象も発生、トランプ大統領の発言で市場大混乱
コロナ禍で揺れる世界経済の行方(6)トランプ発言とアメリカの悲劇
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
新型コロナの感染は迅速で週ごとに様相を変えるが、6月前半の時点で世界最大の被害を被ったのはアメリカである。先進国のトップを走るアメリカが、なぜそんな事態になったのか。すでに多方面から能力不足が指摘されているトランプ大統領の言動を振り返ってみる。(全9話中第6話)
時間:10分45秒
収録日:2020年6月15日
追加日:2020年7月14日
≪全文≫

●世界最大最強の先進国に、なぜ最悪の被害となっているのか


 さて、今回はアメリカについて語りたいと思います。なんといっても世界最強の先進国であるアメリカにおいて、世界最悪の感染流行と世界最大の死者が出現しました。科学技術でも軍事でも経済でも、世界最大最強の先進国であるアメリカが、なぜ感染者約202万人、死者約11.4万人(6月12日時点)という最大の被害を被ったのか。その理由は何かを見ていきましょう。

 アメリカには医療と保険制度の問題があります。日本のような国民皆保険や皆医療の制度が、アメリカにはありません。医療保険は大半が民間サービスで、保険料が非常に高いため、黒人や低所得階層は医療サービスの恩恵を受けにくいのです。そういう構造的・制度的難点があることは、被害拡大の一因です。

 しかし、私が見るところでは、トランプ大統領という指導者の資質と行動に、アメリカの不幸なコロナ禍の最大の原因があるのではないか。どうもそう思えてならないです。アメリカの不幸な現状を理解するために、まずトランプ氏の考え方と行動がアメリカのコロナ対策をどれほど誤らせ、アメリカ国民だけではなく世界にどれほどの被害を与えているかを展望しておく必要があると思います。アメリカ・ファクターは実際、今日の世界の最悪のファクターになっています。


●初期対応の6週間を空費させた大統領の軽視


 私はトランプ氏の発言をたどってきましたが、ここで詳細にそれを追う時間はないので、アメリカに感染が始まってから今日までを三つの局面に分けて、その経験を振り返ってみたいと思います。

 最初の局面は2020年1月末から3月中旬です。中国の感染者が8万人を数えたこの当時、アメリカの感染者は100人もいませんでした。3月16日でも感染者は3774人、死者は69人。この1カ月半ぐらいの間、トランプ大統領の発言は以下のようでした。

「コロナウイルスなんて、インフルエンザより軽いんだ。中国やヨーロッパと違って、われわれは感染を完全にコントロールしている。外出規制や施設封鎖する必要などさらさらない」

 このように言い募って、特別な感染対策を関係機関に指示しませんでした。このために、初期対応で少なくとも非常に貴重な6週間を空費したと専門家は見ています。コロナの感染というのは、1日1時間を争うスピードの勝負なので、とんでもないミステイクをしています...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎