テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
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延期後に開催された中国「全人代」で起きた想定外の事態

コロナ禍で揺れる世界経済の行方(4)中国では何が起きていたのか

島田晴雄
東京都公立大学法人理事長/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
新型コロナウイルスの感染を振り返る発端は、2019年末に新型肺炎患者の出現していた中国・武漢市である。当初「原因不明」とされた新型肺炎に対して中国はどう対応し、この半年間でシステムをつくりあげたか。渦中から明らかになった中国の強みと弱点の双方を検証する。(全9話中第4話)
≪全文≫

●世界各国の感染と抑制を振り返る


 今回からの講義では、これまで申し上げてきたことに対して、世界各国がどういう取り組みでこなしてきたのかを振り返ってみたいと思います。

 世界各国の姿を累積感染者の対数表示で見ると、図7(「世界諸国のCV累積感染者数の推移:対数表示」)のようになります。

 ここで、いくつかのパターンが識別できるように思いますが、アメリカはもう突出してしまっているので、ほとんど論外になります。ヨーロッパの国々はひとかたまりになっていて、だいたい似たような感じです。2月後半から3月にかけて感染爆発が起きたけれども、少しずつ少しずつ終息している。中国は最初に感染数が爆発的に増えましたが、2月の後半から見事に増えていないため、グラフでは横一線を示しています。

 アジア諸国はなかなか賢い対応をして、韓国は最初は感染が増えたけれども優等生だといわれている。シンガポールは、国は小さい割に見事に抑えていたのが、最近感染者数が増えていますが、これにはまた特別な事情があります。日本は、これまでのところ世界の中では比較的優等生ですが、今後どうなるのかという問題があります。


●武漢での初動ミスと李文亮事件


 さて、中国について少し見ていきたいと思うのですが、中国では2019年の12月末に武漢で新型肺炎患者が出現したということです。ところが、これは中国の人たちも認めていることですが、武漢の政府は最初の2~3週間で大変な失敗を犯してしまったと言われます。つまり、市民への説明もちゃんとせず、その結果、感染爆発を招いてしまった。そのため、武漢政府の責任者は責任を問われて解雇されています。

 李文亮という医師の事件は、中国でも世界でも非常に有名になりました。この人は眼科医なのですが、「病院でSARSの感染者が出た」「コロナウイルスの感染が確認された」と友人にアプリで伝えたらしいです。中国の公安は情報管理が徹底していますから、呼び出され、でたらめなことを言うものではないといわれ、処分になります。

 その後、彼はコロナウイルスに感染してしまい、隔離病棟で人工呼吸器をつけて大変だったのですが、ネット上で声を出し続けた。「健全な社会は1種類の声しかないということであってはならない」という共産党政府への批判を発信し続けて、2月7日に亡くなってしまいます。この行為は、「Whistleblower(告発者)」として世界で非常に英雄視されました。

 中国の情報統制が少し行き過ぎているのではないかということは、市民も前々から思っていたことです。市民に速く感染が伝えられて警戒を強めていれば、ここまでの事態にはならなかったのではないか。ただ、これは体制批判にまでいきそうな事態であるため、習近平政権も非常に神経を使ったようです。

 中国国内のこうした動きに乗じて、トランプ氏が中国批判と攻撃を始めます。「中国の情報開示が十分ではなかったので、コロナウイルスの世界感染につながったのだ。おかげでアメリカはひどい迷惑だ」というのですが、WHO(世界保健機関)などが「COVID-19」と呼ぶ新型コロナウイルスのことをトランプ氏は「China virus」と呼び、コロナを拡散させた中国に損害賠償を請求すると息巻いています。


●武漢市民が強力なロックダウンを生き延びた理由


 一方、中国の感染抑制に対する本格対応は、1月18日に始まります。国家衛生委員会が専門家チームを派遣するのですが、団長には鍾南山という(2002~2003年の)SARSを収束させた医師が指名されました。中国では知らない人がいない大先生です。

 彼は武漢到着後しばらくいろいろ調べ、二日後には「人から人への感染」を指摘します。武漢の当局は、それまで「動物からの感染のみで、人からの感染はない」と言っていたのですが、それがとんでもない間違いだったと分かったわけです。

 これは大変だというので李克強首相が先頭に立って、1月23日に武漢をはじめ湖北省のいくつかの都市を完全にロックダウンします。全交通機関が封鎖され、住民は家から一歩も出られず、スーパーマーケットでの買い物もできなくなります。こうしたことが可能だったのはなぜなのか、中国からアメリカに留学している研究者が書いていました。それは、中国全土でアリババなどを中心にしたオンライン・サービスが非常に発達していて、Uber Eatsのような宅配システムが利用できたためです。

 私ごとになりますが、私の孫が中国の清華大学へ半年間の留学をしていました。その孫が、北京到着後しばらくした頃、「ここの生活はとても便利だ」と伝えてきました。一生懸命勉強していると、店の開いていない時間になってしまうが、自炊などしなくても、アプリで注文すれば、15分ほどで宅配される、ということでした。おそらく、武...
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