トランプ2.0と中東
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
米国史で最も「主権主義者」を体現しているのはトランプか
第2話へ進む
トランプとアルキビアデス、「力は正義」という大国の異常
トランプ2.0と中東(1)ふりかざす強者の論理
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
第2次トランプ大統領政権、いわゆるトランプ2.0が世界を揺るがしている。断固とした意思に基づく関税の大幅引き上げ、ウクライナもEUも置き去りにしたロシアとの停戦協議。さらにグリーンランド「買収」発言にみる領土拡大意欲は、単なる不動産王の発想ではなく、毀誉褒貶のあるギリシアの英雄アルキビアデスを見るようだ。(全4話中第1話)
時間:12分07秒
収録日:2025年4月10日
追加日:2025年6月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●「メロス島の対話」を想起するトランプ外交


 皆さん、こんにちは。今日はまず、二人の人物の対話から話を始めてみたいと思います。次のようなものです。

 「正義は力の等しい者の間でこそ裁きができるのであって、強者は自らの力を行使し、弱者はそれに譲る。それが人の世の習いというものだ」とAという人物が言ったところ、Bという人物は次のように言い返しました。

 「窮地に立たされた者には、道理と正義の存在を認めてやること。そして、たとえ正確さに欠けていても、わずかでも納得できる論理を述べた者には利得が与えられることである。それは、われわれ以上に諸君にとって大きな利益となるであろう」

 こういう二人の対話は、さながら現在のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領、あるいは米国のウィトコフ中東特使とガザのハマスの代表者との対話のようにも聞こえるかもしれません。

 しかし、この対話は実際には、民主主義国家の原型ともいわれる古典古代のアテナイ(アテネ)が、紀元前5世紀のペロポネソス戦争において、小国であるメロス島に対して服従を求めたときの交渉の一部に他なりません。これは、トゥキュディデスの歴史書、ペロポネソス戦争を書いた『戦史』の中で、「アテナイとメロスの対話」として引かれ、有名になったものです。

 トランプ大統領と、このアテネの使節に共通するのは、私の見たところ「力は正義なり」という信念です。民主主義は自由競争を是とする限り、力こそ唯一の現実とみなす流れをいつも内包しています。

 この二人(トランプ氏とアテナイの使節)は、人間が最終的に経済力や軍事力といった力を信じるならば、交渉や取引(ディール)の場において、弱者は強者に譲歩する他なく、弱者が力量不相応に領土の主権などにこだわるから紛争が続くのだといいいたいのでしょう。

 しかし、メロス島の代表がアテナイ(アテネ)の使節に諄々と説いたのは、「小国や弱者にも生身の人間が住んでおり、家族とともに生活している」という事実の重さに他なりません。


●「ガザを中東のリビエラに」と考えたトランプ氏の誤算


 トランプ氏は(かつて)「米国が戦地のガザをあえて所有することで、紛争にピリオドを打つことができる」と説いたことがあります。ガザを領有して、いわばフランスのコート・ダジュールのような中東のリビエラ、すなわち中東の海...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ(1)二人の思想家
モンテスキューとルソー…二人の思想家の共通の敵とは?
川出良枝
日本を復活させる国家戦略(1)戦後の復興戦略と日本経済の凋落
「所得倍増」はなぜ成功したか…日本経済の回復のヒント
島田晴雄
資産運用の思考法…経済や市場の動きをどう読むか
市場予測のポイント…短期・中期・長期の視点と歴史的洞察
養田功一郎
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
トランプ政権の極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾

人気の講義ランキングTOP10
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(4)日本人の仏教と先祖崇拝
実は日本人は「仏教」も「先祖崇拝」も真面目に考えなかった?
橋爪大三郎
日本の財政の真実を検証する(2)なぜ財政危機は起きていないか
なぜ財政危機は起きていないのか…国債の金利のトリックを読み解く
宮本弘曉
編集部ラジオ2026(30)AI時代の企業と道徳
【10minで考える】CPO(最高哲学責任者)…AI時代に必須の哲学とは
テンミニッツ・アカデミー編集部
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
不便益システムデザインの魅力と可能性(2)不便がもたらす4つの益
写ルンです、おやつ300円まで…不便がもたらす益の数々
川上浩司
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之