日本の財政の未来
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
国民負担なしに財政再建が不可能な2つの理由
日本の財政の未来(9)日本銀行の国債買いオペ(前編)
小黒一正(法政大学経済学部教授)
法政大学経済学部教授の小黒一正氏によると、日本銀行が国債を買い切ったとしても、国民負担なしに財政再建はできない。それはいったいなぜなのか、その理由を2回にわたり説明する。第1の理由は、金融政策は資産の等価交換にすぎず、国債を支えているのは私たちの預金だからである。私たちの預金が民間銀行と日銀の国債購入へと回されているのだ。(全10話中第9話)
時間:14分47秒
収録日:2017年9月4日
追加日:2017年10月10日
カテゴリー:
≪全文≫

●発行銀行券・当座預金・政府預金で日銀は国債を購入する


 財政と金融に関する接合点について説明します。特に、日本銀行が大量に国債を持つということがどういうことなのか、考えてみましょう。

 近年、政府が1,000兆円の債務を抱える一方で、日本銀行が国債を大量に買っています。そのため、政府と日本銀行を一体として見れば、それ以外の民間が持っている国債は大幅に減っています。この視点で見れば、もうすでに財政再建は進んでおり、これ以上は必要ないのではないか、という議論もあります。ただし、経済学には重要な格言があります。No free lunch、つまり「ただ飯はない」ということです。

 まず、現状の日本銀行のバランスシート(貸借対照表)を見てみましょう。これは、2017年1月31日時点での日本銀行のバランスシートです。左側に資産、右側に負債と純資産、企業でいえば資本金に相当するものが記載されています。

 金額の大きいところに黄色いマーカーを付けました。資産側では、国債がおよそ415兆円あります。国債に比べれば、それ以外の項目はさほど大きくありません。他方、日本銀行の負債と純資産では、一番上にある発行銀行券が目立ちます。これは日本銀行が発行している1万円札と5,000円札、そして1,000円札の総額です。これが私たちの財布の中に入るお金、つまり市場に流通しているお金になります。およそ98兆円です。

 さらに、当座預金と呼ばれるものがあります。これは準備預金を省略して「準備」とも呼ばれます。私たちが民間のみずほ銀行や東京三菱UFJ銀行などに預金するのと同じように、銀行や証券会社、生命保険会社も日本銀行に預金しています。こうした準備預金の総額が331兆円です。その他にも、政府が預けている政府預金が31兆円あります。

 大雑把にいえば、発行銀行券・当座預金・政府預金を使って、日本銀行は国債を購入しているのです。


●日銀が国債を買い切っても、国民負担なしに財政再建はできない


 先に結論を述べれば、日本銀行が国債を買い切ったとしても、国民負担なしに財政再建はできません。その理由は2つあります。第1に、金融政策は財政政策とは違います。財政政策は基本的に、議会で消費税法や所得税法といった税制関係の法律が制定され、それによって強制的に私たちの懐からお金が取られるという仕組みです。集めてきたお金は、対価があろうがなかろう...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(3)サン=ピエールとモンテスキュー
「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も
川出良枝
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
禅とは何か~禅と仏教の心(2)仏典漢訳から日本仏教へ
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照
大人の学び~発展しつづける人生のために(2)熟達と遊び~好奇心から始まる学び
好奇心はコントロールが効かない…遊びの重要な条件とは
為末大
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦