●発行銀行券・当座預金・政府預金で日銀は国債を購入する
財政と金融に関する接合点について説明します。特に、日本銀行が大量に国債を持つということがどういうことなのか、考えてみましょう。
近年、政府が1,000兆円の債務を抱える一方で、日本銀行が国債を大量に買っています。そのため、政府と日本銀行を一体として見れば、それ以外の民間が持っている国債は大幅に減っています。この視点で見れば、もうすでに財政再建は進んでおり、これ以上は必要ないのではないか、という議論もあります。ただし、経済学には重要な格言があります。No free lunch、つまり「ただ飯はない」ということです。
まず、現状の日本銀行のバランスシート(貸借対照表)を見てみましょう。これは、2017年1月31日時点での日本銀行のバランスシートです。左側に資産、右側に負債と純資産、企業でいえば資本金に相当するものが記載されています。
金額の大きいところに黄色いマーカーを付けました。資産側では、国債がおよそ415兆円あります。国債に比べれば、それ以外の項目はさほど大きくありません。他方、日本銀行の負債と純資産では、一番上にある発行銀行券が目立ちます。これは日本銀行が発行している1万円札と5,000円札、そして1,000円札の総額です。これが私たちの財布の中に入るお金、つまり市場に流通しているお金になります。およそ98兆円です。
さらに、当座預金と呼ばれるものがあります。これは準備預金を省略して「準備」とも呼ばれます。私たちが民間のみずほ銀行や東京三菱UFJ銀行などに預金するのと同じように、銀行や証券会社、生命保険会社も日本銀行に預金しています。こうした準備預金の総額が331兆円です。その他にも、政府が預けている政府預金が31兆円あります。
大雑把にいえば、発行銀行券・当座預金・政府預金を使って、日本銀行は国債を購入しているのです。
●日銀が国債を買い切っても、国民負担なしに財政再建はできない
先に結論を述べれば、日本銀行が国債を買い切ったとしても、国民負担なしに財政再建はできません。その理由は2つあります。第1に、金融政策は財政政策とは違います。財政政策は基本的に、議会で消費税法や所得税法といった税制関係の法律が制定され、それによって強制的に私たちの懐からお金が取られるという仕組みです。集めてきたお金は、対価があろうがなかろう...