日本の財政の未来
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ドーマー命題から今後の債務残高GDP比が分かる
日本の財政の未来(3)ドーマー命題
小黒一正(法政大学経済学部教授)
法政大学経済学部教授の小黒一正氏が、債務残高のGDP比の将来予測に関わるドーマー命題について解説する。ドーマー命題を使えば、名目成長率と財政赤字のGDP比から、債務残高が一定の値に収束することが分かる。2017年度発表の内閣府試算では、2025年には政府の債務残高は400パーセントに達してしまうだろう。(全10話中第3話)
時間:10分14秒
収録日:2017年8月1日
追加日:2017年9月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●財政収支は20兆円の赤字になっている


 政府の債務残高のGDP比が、今後もし改革を行わなければ、どれぐらいの水準になるのか、これを説明する理論に、ドーマー命題と呼ばれるものがあります。今回はこのドーマー命題についてお話します。

 政府の債務残高GDP比は、2017年度では、第2次大戦中の200パーセントという水準を、優に超えるところにまで伸びています。また、政策経費と税収・税外収入の差が、プライマリーバランス(基礎的財政収支)を示すわけですが、それは10.8兆円の赤字になっています。

 通常、政府は借金があれば利払いをしなければいけません。そのコストも勘案すると、厳密にいえば、政策経費に利払い費を加えたものが支出です。これと税収・税外収入の差が、いわゆる財政収支と呼ばれるものです。財政収支は、平成29年度(2017年度)の一般会計予算で見れば、20兆円ほどの赤字になっています。歳出の側には、債務償還費と書かれていますが、これは財政収支にはカウントされません。1回の公債金収入で34兆円を借り、すぐに14.4兆円を返します。入ってきた額に対して、すぐに返済する額があるわけです。したがって、実際に借りているのは、差額の20兆円ということになります。これが新たに借金が増える部分、すなわち財政収支の赤字を構成します。


●ドーマー命題から、今後の債務残高GDP比が分かる


 ドーマー命題は、こうした財政収支の赤字と今後の名目成長率から、債務残高のGDP比が今後どれぐらいになっていくのかを予測するものです。

 ドーマー命題とは、次のような命題です。「名目GDPの成長率が一定の経済で、財政赤字を出し続けても、財政赤字対GDPを一定に保てば、債務残高GDP比の比率は一定値に収束する」。このことを証明するのはここでは難しいので、もし必要があれば、公共経済学の本をお読みいただければと思います。

 この命題を利用するために、知っておく必要がある情報は2つです。すなわち、財政収支の赤字(財政赤字のGDP比)と名目成長率です。一方をq、もう一方をnとしましょう。すると、ドーマー命題によれば、債務残高のGDP比がn分のqに収束する、ということが分かっています。

 例えば、名目成長率が1パーセントで、財政赤字のGDP比が5パーセントだとしましょう。そうすると、債務残高GDP比は、500パーセントに向かっていくということになります。もし仮に、名...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
国際地域研究へのいざない(1)地域研究の意味とイスラエル研究
なぜ経済学で軽視されてきた「地域研究」が最高の学問なのか
島田晴雄
会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査
アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果
田中弥生

人気の講義ランキングTOP10
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
ウェルビーイングを高めるDE&I(2)人と組織を取り巻く環境変化:後編
なぜ日本の幸福度は低すぎるのか?会社任せで失われる自律性
青島未佳
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国大名と民衆の過酷な課題…飢饉の常態化をどう生き延びるか
黒田基樹
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
三日坊主、部屋が片付かない…なぜできないか行動分析学で考える
島宗理
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏
昭和の名将・樋口季一郎…ユダヤ人救出編(5)陸軍悪玉論の中の名将たち
武力を持ったエリート官僚たち…陸軍悪玉論と個々人の決断
門田隆将
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
織田家中一の武略者…『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の知られざる実像
黒田基樹