日本の財政の未来
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ドーマー命題から今後の債務残高GDP比が分かる
日本の財政の未来(3)ドーマー命題
小黒一正(法政大学経済学部教授)
法政大学経済学部教授の小黒一正氏が、債務残高のGDP比の将来予測に関わるドーマー命題について解説する。ドーマー命題を使えば、名目成長率と財政赤字のGDP比から、債務残高が一定の値に収束することが分かる。2017年度発表の内閣府試算では、2025年には政府の債務残高は400パーセントに達してしまうだろう。(全10話中第3話)
時間:10分14秒
収録日:2017年8月1日
追加日:2017年9月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●財政収支は20兆円の赤字になっている


 政府の債務残高のGDP比が、今後もし改革を行わなければ、どれぐらいの水準になるのか、これを説明する理論に、ドーマー命題と呼ばれるものがあります。今回はこのドーマー命題についてお話します。

 政府の債務残高GDP比は、2017年度では、第2次大戦中の200パーセントという水準を、優に超えるところにまで伸びています。また、政策経費と税収・税外収入の差が、プライマリーバランス(基礎的財政収支)を示すわけですが、それは10.8兆円の赤字になっています。

 通常、政府は借金があれば利払いをしなければいけません。そのコストも勘案すると、厳密にいえば、政策経費に利払い費を加えたものが支出です。これと税収・税外収入の差が、いわゆる財政収支と呼ばれるものです。財政収支は、平成29年度(2017年度)の一般会計予算で見れば、20兆円ほどの赤字になっています。歳出の側には、債務償還費と書かれていますが、これは財政収支にはカウントされません。1回の公債金収入で34兆円を借り、すぐに14.4兆円を返します。入ってきた額に対して、すぐに返済する額があるわけです。したがって、実際に借りているのは、差額の20兆円ということになります。これが新たに借金が増える部分、すなわち財政収支の赤字を構成します。


●ドーマー命題から、今後の債務残高GDP比が分かる


 ドーマー命題は、こうした財政収支の赤字と今後の名目成長率から、債務残高のGDP比が今後どれぐらいになっていくのかを予測するものです。

 ドーマー命題とは、次のような命題です。「名目GDPの成長率が一定の経済で、財政赤字を出し続けても、財政赤字対GDPを一定に保てば、債務残高GDP比の比率は一定値に収束する」。このことを証明するのはここでは難しいので、もし必要があれば、公共経済学の本をお読みいただければと思います。

 この命題を利用するために、知っておく必要がある情報は2つです。すなわち、財政収支の赤字(財政赤字のGDP比)と名目成長率です。一方をq、もう一方をnとしましょう。すると、ドーマー命題によれば、債務残高のGDP比がn分のqに収束する、ということが分かっています。

 例えば、名目成長率が1パーセントで、財政赤字のGDP比が5パーセントだとしましょう。そうすると、債務残高GDP比は、500パーセントに向かっていくということになります。もし仮に、名...

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