●債務残高のGDP比を考えるとき、金利と成長率が重要になる
財政再建については、経済成長によって財政再建を実現するという立場と、成長も重要だが、やはり増税もしくは税制の抜本改革と歳出の抑制が必要だとする、いわゆる財政再建派の対立があります。究極的には、どちらが正しいのかということは、なかなか分かりません。しかしかつて、これに関して重要な論争が、経済財政諮問会議でなされました。「成長率・金利論争」と呼ばれるものです。今回は、成長率と金利の関係について考えてみたいと思います。
国の政府債務残高のGDP比は、2017年現在、1945年の200パーセントという水準を超える形で、推移してきています。債務残高のGDP比は、スライドのように、分母がGDP、分子が債務残高として表されます。この問題を考える場合、金利と成長率が重要になります。一方で分母のGDPは、いわゆる経済成長率、GDPの名目成長率に従って伸びていきます。つまり、成長率が大きくなるにつれて、分母のGDPも大きくなるわけです。他方で債務残高は、基本的に新たな借金をせず、既存の債務だけであれば、金利につれて膨張していくことになります。
したがって、成長率が金利よりも高ければ、既存の債務については、GDP比の債務残高は、時間がたてば縮小していきます。というのもこの状況では、債務残高が増していくスピードよりも、GDPの成長スピードの方が早くなるからです。反対に、成長率が金利よりも低い状態では、放っておけば、GDP比の債務残高はどんどん大きくなってしまいます。よって、できるだけ早い段階で財政再建をすべきだ、ということになります。
●金利と成長率はパラレルな動きをしている
そこで問題は、金利と成長率がどのような動きをしているのかということです。スライドのグラフは、1980年から2009年頃までの金利と成長率の推移を示しています。政府が発行している国債には、10年債や20年債、30年で償還する国債など、様々な国債があります。それらを加重平均した金利が、太線で表されたものです。他方、細い線が名目成長率を表しています。
一目瞭然ですが、大きな特徴として、金利も成長率もほぼ同じような動きをしています。確かに、例えば1980年代前半は、金利の方が成長率よりも高いのですが、後半になると、成長率の方が金利よりも高くなっています。こうした形で、多少の入れ替わりがありま...