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経済成長だけに頼った財政再建は困難だ

日本の財政の未来(4)財政再建と成長率・金利論争

小黒一正
法政大学経済学部教授
概要・テキスト
法政大学経済学部教授の小黒一正氏が、財政再建問題について、成長率と金利の観点から解説する。金利と成長率はこの30年間、同じように推移してきた。トレンドとしては、金利と成長率の差が1パーセントという状況が、OECD諸国には見られる。財政再建のためには、経済成長率だけに頼ることは難しいだろう。(全10話中第4話)
時間:10:46
収録日:2017/08/01
追加日:2017/09/20
カテゴリー:
≪全文≫

●債務残高のGDP比を考えるとき、金利と成長率が重要になる


 財政再建については、経済成長によって財政再建を実現するという立場と、成長も重要だが、やはり増税もしくは税制の抜本改革と歳出の抑制が必要だとする、いわゆる財政再建派の対立があります。究極的には、どちらが正しいのかということは、なかなか分かりません。しかしかつて、これに関して重要な論争が、経済財政諮問会議でなされました。「成長率・金利論争」と呼ばれるものです。今回は、成長率と金利の関係について考えてみたいと思います。

 国の政府債務残高のGDP比は、2017年現在、1945年の200パーセントという水準を超える形で、推移してきています。債務残高のGDP比は、スライドのように、分母がGDP、分子が債務残高として表されます。この問題を考える場合、金利と成長率が重要になります。一方で分母のGDPは、いわゆる経済成長率、GDPの名目成長率に従って伸びていきます。つまり、成長率が大きくなるにつれて、分母のGDPも大きくなるわけです。他方で債務残高は、基本的に新たな借金をせず、既存の債務だけであれば、金利につれて膨張していくことになります。

 したがって、成長率が金利よりも高ければ、既存の債務については、GDP比の債務残高は、時間がたてば縮小していきます。というのもこの状況では、債務残高が増していくスピードよりも、GDPの成長スピードの方が早くなるからです。反対に、成長率が金利よりも低い状態では、放っておけば、GDP比の債務残高はどんどん大きくなってしまいます。よって、できるだけ早い段階で財政再建をすべきだ、ということになります。


●金利と成長率はパラレルな動きをしている


 そこで問題は、金利と成長率がどのような動きをしているのかということです。スライドのグラフは、1980年から2009年頃までの金利と成長率の推移を示しています。政府が発行している国債には、10年債や20年債、30年で償還する国債など、様々な国債があります。それらを加重平均した金利が、太線で表されたものです。他方、細い線が名目成長率を表しています。

 一目瞭然ですが、大きな特徴として、金利も成長率もほぼ同じような動きをしています。確かに、例えば1980年代前半は、金利の方が成長率よりも高いのですが、後半になると、成長率の方が金利よりも高くなっています。こうした形で、多少の入れ替わりがありま...
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