日本財政を巡る課題
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日銀のバランスシートは金利上昇に脆弱である
日本財政を巡る課題(4)日本銀行のバランスシート
政治と経済
小黒一正(法政大学経済学部教授)
法政大学経済学部教授の小黒一正氏によれば、金融政策は等価交換にすぎず、日銀が国債を買っても国全体の債務は減らない。前回に引続き、その第2の理由を解説する。日銀と政府を統合バランスシートで見た場合、金利上昇に脆弱な構造であることが判明した。法定準備率の引き上げやマイナス金利の拡張は解決策になるのか。(2017年10月30日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「日本財政を巡る課題」より、全8話中第4話)
時間:8分05秒
収録日:2017年10月30日
追加日:2018年5月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●国債買いオペによる日銀と政府の統合バランスシートの変化


 金融政策が等価交換にすぎないという第2の理由は、日本銀行と政府部門を合わせて政府の債務構造を見れば明らかになります。図表1と図表2は前回と全く同じですが、政府部門と日本銀行を合わせた図表4が変わります。政府部門と日銀を合わせると、図表1は図表4(1)、図表2は図表4(2)という形になります。

 例えば図表1では、政府が発行している国債800のうち、日本銀行が400持っています。したがって統合バランスシートを作ると、実際に償却はしませんが、国債は400になります。日本銀行が持っている現金100と準備250が負債に残りますが、政府が持っている政府預金と日本銀行が持っている政府預金はキャンセルされます。これとちょうど鏡になるように、民間銀行が資産を持っています。

 問題は、図表2のケースと何が違うのかということですが、金額は同じです。政府部門と日本銀行のバランスシート合計値は750です。ただし構成が違ってきます。図表4(1)のケースでは、現金100、国債400、準備250です。それが国債の買いオペレーションをすると、図表4(2)のケースになります。全体は750ですが、今度は国債が300、準備が350に変わります。

 日本銀行が国債を買えば、準備が増えます。準備は民間銀行の資産です。例えば今後金利が上昇すれば、当然長期金利も上がります。そうすると、国債の金利も上がるわけです。それでは、準備の金利を抑制したらどうなるでしょうか。例えば準備の金利を0にすれば、民間銀行からすると、準備に預けているお金の金利は付きません。実質的に、金利がカットされているのと同じことになります。


●金利上昇に非常に脆弱な構造になっている


 これを文章化すると、よりクリアに分かるかもしれません。スライドにある「超過準備」とは準備のことだと思っていただいてかまいません。金利が正常化する中で、市場金利との関係で、超過準備の金利を適切な水準まで引き上げずに抑制する、例えば0にする場合、これは預金課税をしているのと変わらないのです。

 反対に、適切な水準まで引き上げると何が起きるでしょうか。日本銀行が持っている準備はコストゼロではなく、単にスーパー短期の国債のようなものです。したがって、準備の金利を引き上げると、そのコストが顕在化します。

 最近日銀は国債を買い続けていますが...

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