日本財政を巡る課題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本の社会保障は非常に非効率
日本財政を巡る課題(5)非効率的な社会保障
小黒一正(法政大学経済学部教授)
法政大学経済学部教授の小黒一正氏によれば、日本の社会保障は非常に非効率的であり、低所得者層や本当に困っている人たちに富が再分配されていない可能性がある。実際、低所得者層への再分配率は2パーセントと、アメリカ並みの水準になっている。(2017年10月30日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「日本財政を巡る課題」より、全8話中第5話)
時間:6分38秒
収録日:2017年10月30日
追加日:2018年5月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●低所得者層に分配の原資が向いてない可能性がある


 ここからは、もう少し踏み込んだ話をしたいと思います。「政治の役割」という資料を見てください。今の財政構造には、かなり多くの無駄があります。これも財政再建に対して賛意が得られない最大の理由だと思います。一言でいえば、低所得者層や本当に困っている人たちに分配の原資が向いていない可能性があるのです。

 このことがファクトとして分かるのが、次の資料です。英語でRedistribution through cash transfer and household taxes towards people at the bottom of the income ladderと書かれています(訳:所得最下層の人々に対する現金給付と家計税を通じた再分配)。つまり、一番所得が低い階層に対して、どういったトランスファー(給付)がなされているかを、OECD各国で比較した表です。

 日本はこの赤い部分になります。縦に3段ありますが、一番左側にあるのは、もらっている分です。要するに、どれだけもらっているか。真ん中はどれだけ支払っているか。一番右側は、ネットで見た場合に、負担と給付、受益と負担でどれぐらいもらっているかを示しています。

 順番に見ていくと、左側のGross public transfers paid to households(家計に支払われる給付総額)にはA、B、Cがあります。Aにはhousehold disposable incomeと書かれていますが、要するに、その国全体の家計の可処分所得です。家計の可処分所得に対して、政府が全体で、年金や生活保護といった形で、どの程度給付(トランスファー)しているのか、その割合を示しています。日本は大体19.7パーセントです。Bは、そのトランスファーのうち、一番所得が低い人たちに対して支払われているウエートです。それが15.9パーセントです。したがって、19.7パーセントに15.9パーセントを掛けると、全体の家計の可処分所得に対して、所得が低い人がもらっている金額はどのぐらいなのかということが分かります。それがCの3.1パーセントです。

 次に、家計が負担している金額を示したものが真ん中の列になります。Dはそのアベレージを示していますが、これは給付されている額と全く同じ19.7です。日本がたまたまそうなっているだけで、一番上のオーストラリアなどを見ても分かる通り、他の国では数字が違っています。次にEを見ると、全体の税金のうち、所得が一番低い階層の人が負担しているのは6パーセ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦