●低所得者層に分配の原資が向いてない可能性がある
ここからは、もう少し踏み込んだ話をしたいと思います。「政治の役割」という資料を見てください。今の財政構造には、かなり多くの無駄があります。これも財政再建に対して賛意が得られない最大の理由だと思います。一言でいえば、低所得者層や本当に困っている人たちに分配の原資が向いていない可能性があるのです。
このことがファクトとして分かるのが、次の資料です。英語でRedistribution through cash transfer and household taxes towards people at the bottom of the income ladderと書かれています(訳:所得最下層の人々に対する現金給付と家計税を通じた再分配)。つまり、一番所得が低い階層に対して、どういったトランスファー(給付)がなされているかを、OECD各国で比較した表です。
日本はこの赤い部分になります。縦に3段ありますが、一番左側にあるのは、もらっている分です。要するに、どれだけもらっているか。真ん中はどれだけ支払っているか。一番右側は、ネットで見た場合に、負担と給付、受益と負担でどれぐらいもらっているかを示しています。
順番に見ていくと、左側のGross public transfers paid to households(家計に支払われる給付総額)にはA、B、Cがあります。Aにはhousehold disposable incomeと書かれていますが、要するに、その国全体の家計の可処分所得です。家計の可処分所得に対して、政府が全体で、年金や生活保護といった形で、どの程度給付(トランスファー)しているのか、その割合を示しています。日本は大体19.7パーセントです。Bは、そのトランスファーのうち、一番所得が低い人たちに対して支払われているウエートです。それが15.9パーセントです。したがって、19.7パーセントに15.9パーセントを掛けると、全体の家計の可処分所得に対して、所得が低い人がもらっている金額はどのぐらいなのかということが分かります。それがCの3.1パーセントです。
次に、家計が負担している金額を示したものが真ん中の列になります。Dはそのアベレージを示していますが、これは給付されている額と全く同じ19.7です。日本がたまたまそうなっているだけで、一番上のオーストラリアなどを見ても分かる通り、他の国では数字が違っています。次にEを見ると、全体の税金のうち、所得が一番低い階層の人が負担しているのは6パーセ...