●アブセンティーイズムとプレゼンティーイズム
―― 西野先生、それでは「仕事と睡眠の関係」ということで、お話をうかがいたいと思います。
仕事によっては、例えば夜勤のシフトがあったり、日勤と夜勤を繰り返したりするような仕事もあります。また、きちんとした仕事をするためには睡眠が大事だというのは間違いないところです。仕事をする人たちが睡眠について、どのように考えればいいのかというところをぜひ教えていただきたいと思います。
西野 そうですね。一つは、やはり十分な長さで質のよい睡眠をとらないと、仕事の能率が上がらないということは、現在いわれています。能率だけではなく、ちょっとしたことでいらいらする、ミスももちろん増えるということになります。
それで、最近よく言われるようになった言葉に、「アブセンティーイズム」と「プレゼンティーイズム」があります。以前は、仕事の能率に関連して欠勤や早退が注目され、それらの対策としていろいろなことを考えるのが大事だと思われていました。
しかし、人件費からすると、仕事には出てきているけれどもろくに仕事をしていない、あるいは能率が上がらない、あくびばかりして目をこすっていて、集中力もない状態のほうが、全体の生産性に対して大きな影響を与えます。その原因の一つとして、やはり睡眠が非常に重要だということが、特にアメリカで分かってきています。
●アメリカでは24時間以上睡眠を取らずに運転すると刑事罰になる
西野 極端な話をすると、お酒を飲むと判断力や敏捷性が低下してくる。例えば日本では、血中アルコール濃度0.05パーセント(呼気1リットル当たりのアルコール量0.25ミリグラム以上)以上の飲酒運転をすると免許取消になるはずですが、そのときに反応性がどのぐらい低下するかということは、検査で分かります。
シンプル・リアクション・タイムに近いものですが、これが睡眠の場合は、より退屈に作ってあります。タブレットに○(丸)が出たら、押す。それを5~10分ランダムに続けるので、普段の眠くないときでも退屈になるような検査です。免許取消になるほどお酒を飲んだときには、飲んでいないときよりも反応性が20パーセントぐらい落ちるとします。この検査を睡眠を取らない状態に当てはめてみます。例えば、夜寝るというときから何時間連続して起きていると、免許取り消しになるような...