物流「2024年問題」~その実態と打開策~
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ジャスト・イン・タイム…物流業界の生産性が低い要因とは
物流「2024年問題」~その現実と打開策~(3)「2024年問題」を乗り越えるために
首藤若菜(立教大学経済学部教授)
2024年4月、物流関連法が可決成立し、政府が「2024年問題」の改善を後押しする動きを見せている。労働時間の短縮と賃金単価の上昇を同時に進めるためには、生産性の向上が必須だが、どうすればいいのか。中継輸送、モーダルシフトなどの方策が講じられているが、そこには課題も少なくない。そもそもなぜ物流業界の生産性は低いのかという問題もある。その一つの要因である「ジャスト・イン・タイム」を解説しながら、「2024年問題」を乗り越えるための方策を提示する。(全3話中第3話)
時間:13分16秒
収録日:2024年4月30日
追加日:2024年7月2日
≪全文≫

●中継輸送、モーダルシフト…問題を乗り越えるための方策と課題


 では、この「2024年問題」をどのようにして乗り越えていけばいいのかということをご説明していきたいと思います。

 今求められているのは、労働規制が強化されることによって労働時間を短縮していかないといけないということ。ただ、短縮によって賃金水準が下がっていくと、さらに人手が流出してしまって、人手不足はさらに深刻化してしまうかもしれないということです。そのため、労働時間を短くするとともに賃金の単価を上げていくことが求められています。

 時間を短くして賃金単価を上げていくために、まず必要なのは生産性の向上だと思います。どのようにして生産性を向上すればいいのかということですが、それに成功している事業者もいます。

 例えば、九州から東京まで荷物を運んでいる事業者においては、従来1人のドライバーが出発地の九州から東京まで荷物を運んできました。しかし、改善基準告示の規制の強化が行われると、これからは労働基準をオーバーしてしまいます。つまり、法令を遵守できないという実態があります。ですから、例えば、九州から大阪までをAさんが運び、大阪でドライバーをチェンジして、大阪から東京までをBさんが運ぶ。これは「中継輸送」と呼ばれますが、このドライバー2人体制によって労働時間を短くすることに成功するというパターンがあります。

 ただ、すぐに分かる通り、従来は1人の人件費でよかったものが2人分の人件費が必要になります。ですから、こういった中継輸送を行うときに採られる手法としては、例えば、従来よりも大型の車両を使う(ことです)。従来は10トントラックで運んでいたものを24トンのトレーラーに替えることによって、より多くの荷物を1人のドライバーが運び、そのことによって運賃を上昇させる。運賃が上昇することによって、ドライバーは労働時間を削減しながらも賃金を上昇させることができるという成功事例もあります。

 このような形で、生産性を向上させることによって労働時間を短くする、そして賃金を高くする、というようなことができるのが望ましいと思っています。

 ただ、非常に難しいこととして、この業界では規制緩和後に、中小事業者の数が非常に多くなっています。規模の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
ロボットの「カンブリア爆発」時代へ電動化がもたらすもの
岡本浩
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(2)「ほめる」技術
男性は「ほめる」のが苦手?傾聴から始まる「ほめる」技術
三谷宏治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ