物流「2024年問題」~その実態と打開策~
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
分岐点は1990年「物流二法」…過重労働するドライバーの実態
物流「2024年問題」~その現実と打開策~(2)ドライバーの労働条件が低下した背景
首藤若菜(立教大学経済学部教授)
ドライバーの賃金に関する実態調査によると、トラックドライバーの場合、多くの残業時間を含む長時間労働によって、ようやく一般の労働者に比較的近い収入を得ているという。しかし、そうしたいわゆる過重労働がドライバーの健康を蝕む労働災害を生み、それが人手不足にもつながるという現実が見えてくる。ではドライバーの労働条件が低下した背景には何があるのか。詳細なデータを丁寧に取り上げながら解説を進める。(全3話中第2話)
時間:7分51秒
収録日:2024年4月30日
追加日:2024年6月25日
≪全文≫

●ドライバーの労働時間と賃金水準の実態


 では、現在のドライバーの労働の実態がどのようになっているのかをご説明していきたいと思います。

 これが、ドライバーの労働時間と賃金の水準になっています。

 トラックドライバーというのは96パーセントが男性労働者ですので、今回は男性労働者の平均値と比較してご説明をしていきたいと思います。

 労働時間(の右側にある)超過実労働時間数を見ていただくと、これがいわゆる残業時間になりますが、一般の男性労働者よりも残業時間はおよそ2倍から3倍ぐらいの長さになっていることが分かると思います。

 賃金の(一番左側)、「きまって支給する現金給与額」と書かれているものが、1カ月の残業込みの賃金水準になります。これを見ていただくと、男性労働者1に対して、大型の貨物自動車の運転手(大型のトラックドライバー)が0.98、中小型(大型以外)のトラックドライバーが0.88となっています。1カ月あたりの残業込みの賃金水準では、男性の平均にかなり近づいているわけですが、残業なしの「所定内給与額」を見ていただくと、男性労働者1に対して0.84(大型)、0.77(中小型)ということで、8割ぐらいに下がっているのが実態となっています。

 つまり、トラックドライバーは非常に長時間の残業をすることによって、一般の労働者に比較的近い収入を得ているというのが実態になっています。ですので、ドライバーの労働時間が削減されることによって、賃金水準が下がってしまうのではないかという懸念があります。


●長時間労働は労働災害を生み、人手不足にもつながる


 また、この労働時間の長さが何を引き起こしているのかについては、次の「労災補償状況」を見ていただきたいです。

 これは、いわゆる過重労働によって引き起こされるといわれる「脳・心臓疾患の労災」の請求件数と支給決定件数を示しているものです。

 業界ごとに数が違うので、多い業界から順番に上から並べていますが。一番多いのが、どちらも「運輸業、郵便業」になり、中分類で見てみると、道路貨物運送業になります。

 いわゆるトラックドライバーが、労災の請求件数も支給決定件数も最も多いのですが、かつ、1位と2位の間の差も非常に大きいことが分かると思います。この脳・...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄