物流「2024年問題」~その実態と打開策~
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
2024年問題は2024年で終わらない…物流業界の厳しい現実
物流「2024年問題」~その実態と打開策~(1)「2024年問題」とは何か
首藤若菜(立教大学経済学部教授)
トラックドライバーの労働時間制限によって引き起こされる物流「2024年問題」。トラック業界に訪れる働き方改革は、5年間の猶予措置を経て、さまざまな問題を噴出させる。中でも注目すべきは、時間外労働の上限規制と改善基準告示の改正である。それらによって最も憂慮されるのは、年間4億トンの荷物が運べなくなるということだ。いったいどういうことなのか。具体的な数値を挙げて、この問題の実態について解説する。(全3話中第1話)
時間:6分45秒
収録日:2024年4月30日
追加日:2024年6月18日
≪全文≫

●5年間の猶予措置を経て訪れた「2024年問題」


 立教大学の首藤若菜と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は物流の「2024年問題」についてお話をさせていただきます。まず、「2024年問題」とは何であるのかということからご説明をしたいと思います。「2024年問題」とは、トラックドライバーにも働き方改革が適用されるという問題です。

 トラックドライバーに働き方改革が適用されると、ドライバーにも労働時間の短縮が求められていきます。労働時間の短縮自体は、ドライバーにとっては望ましいことなので、それを「問題」と騒ぐこと自体が問題なのではないかと私は思いますが、労働時間が短縮されることによって荷物が運べなくなるのではないかという懸念が非常に高まっていて、それゆえに「2024年問題」と呼ばれています。

 働き方改革にはさまざまな内容が含まれていますが、その中に「時間外労働の上限規制」というものがあります。一般労働者の時間外労働(残業)の上限規制は年間720時間までというように、2019年から施行されています。

 ところが、トラックドライバーをはじめとしていくつかの業種においては、労働時間が非常に長いという実態があり、これを2019年の段階で適用するのはまだ時期尚早であるとして、その後5年間の猶予措置が設けられました。その適用が2024年からとなり、「2024年問題」と呼ばれている実態があります。

 かつ、トラックドライバーについては、一般のドライバーや労働者が年間720時間(を上限規制とする)のに対して、それよりも240時間長い、年間960時間という(時間外労働の)上限規制が適用されることになりました。


●トラック業界の「働き方改革」が与えるインパクト


 なお、トラックドライバーにはこの労働基準法の時間規制の他にも、「改善基準告示」という別のワークルールも適用されています。自動車を運転するという特性から、例えば「ハンドルを握る時間」などもルールによって定められてきたわけです。

 労働基準法の改正に合わせて、こちらの改善基準告知の改正も進み、この図表に示しているものが主な改正内容となります。

 例えば、1年の拘束時間。従来は3516時間だったものが、これからは3300時間というように見直しが進みました。拘束時...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史