オリンピック後の経済を考える
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
マクロ経済の動向を決める第一要因はオリンピックではない
オリンピック後の経済を考える(2)日本の取るべき道
伊藤元重(東京大学名誉教授)
一般に、オリンピック後は経済が低迷するといわれているが、必ずしもそうではないとして、伊藤元重氏はロンドンオリンピック後のイギリス経済について解説する。ただ、マクロ経済の動向を決める第一要因は決してオリンピックではない。日本の現況では供給の伸びが鍵となる。そのために、政府がすべきことは何か。また企業としてはどんな努力が必要となるのか。(全2話中第2話)
時間:8分08秒
収録日:2019年10月31日
追加日:2019年11月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●ロンドンオリンピック・パラリンピック後のイギリス経済


 ただ、諸外国のオリンピック・パラリンピック後の動きを見ると、常にオリンピック・パラリンピックの後は経済が低迷するのかというと、必ずしもそうではない、ということにも注目すべきだと思います。

 1つの事例としてよく取り上げられるのが、ロンドンオリンピック後のイギリス経済です。簡単にいうと、ロンドンオリンピック後のイギリス経済は、いわゆる海外からの観光客が途絶えることが少なく、結果的にはそれが景気を下支えする非常に重要な役割を果たしてきたといわれています。

 これはどういうことが起こったかというと、オリンピック・パラリンピックの時期は当然多くの人がイギリスに来たがったわけですから、その分ホテル代は高くなりますし、混雑します。あるいは、航空料金もその時期は高くなる。一方、オリンピック後は、どちらかというと飛行機やホテルの空きが増えていく時期になりますから、料金も下がってきます。そこで、オリンピック・パラリンピックをテレビで見たような人たちも含め、そうした状況を利用してむしろ旅行者が増えたのです。

 もちろん、オリンピックを契機にロンドンの街づくりだとか、いろいろなイベントも開催されるようになってきたので、いわば観光地、訪問先としても魅力が増しているということだろうと思います。


●オリンピック・パラリンピックを海外への発信の機会を捉える


 日本についても、オリンピック・パラリンピックはもちろん世界に向けて、日本、東京の魅力を発信する最大のチャンスであるわけです。その魅力を発信した結果として、海外からいろいろな形で人が来るということで、オリンピック・パラリンピック後にどれだけ回収できるか、あるいはそれに向けた動きができるか、というのが結構重要な話になります。

 インバウンドが日本の経済にとって非常に重要であるというのは、別にオリンピック・パラリンピックに限った話ではなく、4~5年前、あるいはもっと前から、重要な政策として掲げられてきて、それなりの成果を挙げてきたわけです。これがオリンピック・パラリンピック後も、むしろ積極的に展開するようなしかけが必要ですし、オリンピック・パラリンピックもそのための1つのプレゼン(宣伝)というか、海外への発信の機会と捉えればいいだろうと思います。


●供給サイドの伸び...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
中国共産党と人権問題(5)そもそも人権思想と憲法とは?
中華人民共和国憲法は人権型ではない
橋爪大三郎
『貞観政要』を読む(1)長期政権を目指す者の必読書
北条政子も愛読した長期政権のバイブル『貞観政要』
田口佳史
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子