「新しい資本主義」の本質と課題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
再分配には限界が…もう1つ大事なこととは
「新しい資本主義」の本質と課題(3)再分配と「独占力の行使」の問題
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)
日本では今、再分配の議論が盛り上がりを見せている。格差が拡大する中で再分配は大切だが、一方で日本全体として全員の所得を増やすための政策も必要だ。そこで気になるのは賃上げの問題と、企業における「独占力の行使」という問題だ。これらをどう考えればいいのだろうか。(全6話中3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分06秒
収録日:2021年11月22日
追加日:2022年1月27日
カテゴリー:

●再分配の議論とその注意点


―― 現在、いわゆる再分配の議論もあちらこちらで聞かれるようになりました。今この時代に再分配をすることになると、具体的にはどういうことに注意して行っていけばよいのでしょうか。

柳川 再分配となると、一度得たものをもう1回配り直す形になります。そうすると、やはり税等で徴収したものを補助金や寄付金、あるいは減税などで戻すことになります。

 税や補助金を中心とした再分配で最終的な所得分布を考えるのか。それとも、もともと稼げる分を、誰がどの程度稼げる世の中にしていくのか――。これは、競争政策あるいは法的な規制などによってもずいぶん変わってきます。だから、政策のあり方と考えるときには、税・補助金を中心とした再分配だけではなく、もともと稼ぐ部分を誰がどのように行うかという、そのルールもしっかり考えていくのが建設的だろうと思うのです。

―― ちょうど今、「所得倍増」のような言葉が世間に踊ったりしていますが、やはり再分配よりも、どう稼いでいくか、あるいは従業員にどう賃金を払っていくかという発想が大事になるのでしょうか。

柳川 そうですね。やはり再分配でできることには限界があります。またお金を一旦政府に入れて、また政府から国民の誰かに戻していくという過程には、場合によっては無駄が発生しやすい。その意味でも、そもそもの稼ぐ部分で、どのくらい稼げるようにしていくかということが大事です。

 もう1つは、誰かの取り分を減らして誰かの取り分を増やすよりは、日本全体として全員の所得を増やす、全員がそれぞれもっと稼げるようにしていくというのが目指すべき方向だと思います。今、潜在成長率がずいぶん下がっていると言われている中で、小さなパイを誰とどうやって分け合うかを考えるよりは、全体のパイをどれだけ大きくしていくか、その中でそれぞれの立場の人がどうやってより稼げるようにしていくかということを考えるのが王道でしょう。


●賃上げの問題と付加価値生産性


―― もう1つ、最近特に日本において言われるのが、労働者に対する賃上げのペースが遅すぎるのではないかということです。企業の収益は上がっているのに、なかなか賃金に反映されない。これはなぜなのでしょうか。

柳川 2つの側面があると思います。1つは、それぞれの人たちが、新しい技術革新、新しい経済環境の中で能力アップを図っていくこ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史