「新しい資本主義」の本質と課題
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
所得の二極化――話題となったピケティの議論の裏側に迫る
「新しい資本主義」の本質と課題(2)「所得の二極化」と技術革新
政治と経済
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)
今現実に起きつつあるのが「所得の二極化」だ。かつて日本の高度成長期は分厚い中間層に支えられていたと言われたが、その中間層が今、低所得化してきており、一方で高所得者はますます高所得となっている。この背景として社会では何が起こっているのか。(全6話中2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分23秒
収録日:2021年11月22日
追加日:2022年1月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●技術革新の結果、「所得の二極化」が起こっている


柳川 私自身が注目しているのは、最近騒がれるようになってきた「所得分布の二極化」が自動化、機械化、最近であればAI化で起きているといわれていることです。こちらの影響も、ピケティの議論が話題を呼んだ裏側にはあったのではないだろうかと思います。

―― それは具体的にはどういうことですか。

柳川 いわゆる「中間層」といわれる人たちが真面目に働いて、ある程度の所得を得ていたのですが、例えば自動化が進み機械が全て行うようになると、中間層の仕事が全部機械に置き換わってしまう。あるいは本来、人が能力として持っており、高いスキルだといわれていたものが自動化されてしまうと、そのスキルがなくても誰かが簡単に行えるようになってしまう。すると、所得の中間レベルにいた人たちは次々に低所得者となり、一方、ものすごく稼げる人たちはますます高所得になっていく。例えばAIのイノベーションを起こすような人たちは所得を高めていく。

 それだけの理由ではないと思いますが、技術進歩の結果として所得が二極化しているといわれています。この影響も大きかったのではないかと思います。

―― それこそマルクスなどが生きていた時代であれば、当時も技術革新で、いわゆる熟練工が次々と機械に取って代わられました。例えば織物産業でも、機械が増えたから労働者の賃金がどんどん安くなる。そこでマルクス主義的なものが登場する背景が生まれたのだろうと思いますが、今はそれと同じ局面なのでしょうか。それともまったく違う局面なのでしょうか。

柳川 技術革新が大きな所得構造を急激に変化させるという意味では同じなのだと思います。そのため、ある程度の所得を得られていた人が、大きな技術革新が起きたことで、十分な所得を得られなくなってしまう。そこから、「社会としてこれでいいのか」という課題を抱えることになり、多くの人が「これではいけないのではないか」と思い始める。この構造は似ています。

 違うのは、その技術革新の中身です。あるいはマルクスの時代は、資本を持っている人がお金を余計に得るということが強調されました。現在は、資本も大事ですが、例えばすごい知恵や新しいアイデアといったことがとても強調されています。

 適切な例か分かりませんが、今非常に騒がれているのが、「GAFA」といわれるグローバル...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
「新しい資本主義」の本質と課題(1)新自由主義と『21世紀の資本』
新自由主義からの時代背景から「新しい資本主義」を問う
柳川範之
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
自民党総裁選~その真の意味と今後の展望
「マスコミ報道」では見えない自民党総裁選の深い意味
曽根泰教
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子