「新しい資本主義」の本質と課題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ステークホルダー資本主義、今と昔で何が違うのか
「新しい資本主義」の本質と課題(6)ステークホルダー資本主義の正しいあり方
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)
日本がかつて重視してきた「ステークホルダー資本主義」と、今の「ステークホルダー資本主義」には大きな違いがある。それは、技術革新によるデータの「見える化」で、ステークホルダー全体を見渡せた経営ができるようになってきている点だ。今は、各ステークホルダーがコンフリクトを起こすことのなく利益を享受できる経営が求められているのだ。(全6話中6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分59秒
収録日:2021年11月22日
追加日:2022年2月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●現代のステークホルダー資本主義


―― 先生のご感触として、企業を巡る潮目、環境の潮目が少し変わったとお感じになりますか。それこそ少し前ですと、株主資本主義の傾向が強く、四半期決算をどうするか、株の配当をどうするかといったことが比較的注目されたりもしましたが、そういう状況ではなくなりつつあるということなのでしょうか。

柳川 単純に「四半期決算が必要ない」「株主よりも他の人のニーズを重視する」といったことでもない気がします。多くの人が、中長期的にどういった方向で全体の価値を上げていくかということに関心を持つようになってきました。そのため株主の側も、例えばSDGs関連にどのような取り組みをしているかといったことに関心を持つようになりましたよね。

 短期的には業績にとってマイナスに見えるようなSDGs関連の取り組みや環境への投資などが、株主にとっても関心事になってきている。株主の側も、そういったところにきちんと配慮した会社でなければ中長期的な価値は上がらないと考えるようになったし、実際にそうだということが分かってきたのです。

 最近、「ステークホルダー資本主義」ということがいわれています。株主を第一に考えるだけではなく、環境問題、地域住民、従業員といったステークホルダーをしっかり考えていきましょうという考え方になっている。ですが、ステークホルダー資本主義が株主軽視なのかというと、そうではありません。株主にとっても「ステークホルダー全体をしっかり見た経営をしてもらうことが中長期的な株式の価値につながる」という理解が広がってきたし、そのように経営を進めていくことが可能になってきたのでしょう。

 ですから、「誰かを重視しない代わりに、別の人を重視するようになった」という話ではなく、「もう少し全体的に見るべき視点がしっかり見えるようになってきた」ということだと思います。先ほどから申し上げているような「見える化」が進んできたということで、ステークホルダー資本主義が言われるようになったのでしょう。

 これは実は昔から日本では当たり前のようにあった話なので、「今さらなぜ?」という感覚があると思います。結局、われわれが以前から重視してきたことが、ヨーロッパからまた「これが大事でした」と言われているだけではないか。

 そういう面はあるでしょう。ですが、日本がかつて重視してきた...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑