●世界一睡眠時間が短いのは日本人女性なのか
―― 先生、今回は「睡眠における性差」ということで、男性と女性の差ということですが、とりわけ女性にとっての睡眠ということを考えた場合には、どういうところがポイントになりますでしょうか。
西野 私は動物実験などをするのですが、動物の場合に睡眠量の性差はほとんどありません。だから基本的に生物学的には、男性も女性も睡眠量は変わらないはずなのです。ただ、睡眠に影響を与えるホルモンとして性ホルモンが数えられますので、人間であれば女性のほうが第二次性徴が早いとか、そういったことには性差が出てきます。
一つ興味深い統計があって、欧米では男性より女性が20~30分ぐらい長く寝る国が多いのですね。ところがアジアは、インドもそうだったと思いますが、男性より女性のほうが20~30分短いのです。特に女性で有職者(仕事のある人)が短いです。
睡眠時間にはいろいろな調査がありますが、日本人は男女あわせて世界で一番短い。特に日本人の女性が男性よりも20~30分短いということは、日本人女性は世界で一番睡眠時間が短い可能性がある。
それは生物学的なものではなくて、社会文化的な側面、特に仕事のある人はそうです。最近は「育メン」とかいうことで、認識も高まって分担されるようになってきたのですが、今でも家事や育児は女性に任せている場合も多い。そういう方たちが仕事を持つと、睡眠時間は確保できないということです。
●「眠らない女性は太る」生理学的な理由
西野 女性の場合、十分な睡眠が取れないと太るということも出てきています。なぜ太るかというと、最初にそれが話題になったのが2000年ぐらいでした。アメリカの疫学の比較で、睡眠時間の短い女性は、それが短ければ短いほど太るということが分かったのです。
それで、これまで睡眠に興味のなかった内科の内分泌のお医者さんたちが興味を持ち出しました。私たちも動物実験をすることはあったのですが、「眠らないとよく食べる」ことが分かってきたのです。
その機序に関しても、太っている人は脂肪細胞からレプチンというホルモンが分泌されて、あまり食べない(太らない)ようにネガティブ・フィードバックがかかっているのです。ところが、夜の睡眠を十分にとらないと、その機序が働かなくなって、非常に多く食べるようになるのです。
一方で、胃...