「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
認知症にも影響する睡眠…グリンパティック・システムとは
「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(2)なぜ睡眠が必要なのか
西野精治(スタンフォード大学医学部精神科教授)
睡眠はそもそもなぜ必要なのか。「最高の睡眠」シリーズの第2話では、1950年代以降という睡眠医学の歴史を振り返りつつ、睡眠が人間にとって不可欠である理由をたずねていく。とりわけ重要な「グリンパティック・システム」とは、脳の老廃物を除去する仕組みであり、認知症にも関わっているという。(全7話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:16分13秒
収録日:2021年6月23日
追加日:2021年10月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●1950年代に分かった「脳の自発的活動」としての睡眠


―― 西野先生、今回は「睡眠はそもそもなぜ必要なのか」というお話をうかがいたいと思いますが、人間というのはなぜ寝るのでしょうか。

西野 夜は非活動期ですから、そのときに睡眠を行うということは、結局は日中の活動を上げて健康な生活を送るということだと思うのですね。

 私の専門は睡眠医学なのですが、睡眠医学というのは非常に歴史が浅いものです。例えば1950年の時点では、睡眠はあまり大した役割をしておらず、「疲れを取る」「眠気の放出」程度のこととしか思われていなかったのです。

 ところが、そこから二つの大きな発見があります。一つは、それまで睡眠は受動的なもので、部屋が暗かったり音がなかったりすれば勝手に眠ってしまうと考えられていました。ところが動物実験で、「感覚遮断」といってそうした音が聞こえない、光が感じられない状態にしてみても動物は寝ることがなく、むしろ脳のある部位の活動を止めるようなことをすると、寝たような状態に達することが分かりました。

 今では当たり前のことなのですが、睡眠は脳の自発的な行動であり、脳のある部位が覚醒を維持するために活動を続けなければいけないということが分かりました。つまり、その活動が減絶すれば睡眠が引き起こされるということです。それが分かったのが、70~80年前です。


●「レム睡眠」の発見と記憶を整理する役割


西野 ほぼ同じ頃に、レム睡眠の発見がありました。レム睡眠の発見というのは現象の発見です。その発見は、アメリカでも日本でもですが、日本では東京大学の時実利彦先生、フランスではリヨンのミッシェル・ジュべー氏、アメリカはシカゴ大学のユージン・アセリンスキー教授とナサニエル・クレイトマン教授、そしてウィリアム・C・デメント氏です。

 彼らの業績により、寝ているときにも起きているときと同じように脳が活発に動いて夢を見るような睡眠があることが1950年代に分かったのです。

 それからは盛んに「レム睡眠の役割」ということが研究されます。なぜそういった睡眠があるのか。その中から、レム睡眠が脳を活発にさせる、夢を見させる、その間に記憶を整理して定着させるということが分かってきました。

 この発見により、それまで睡眠にあまり興味のなかった神経科学者たちが、睡眠研究に興味をもち始めます。そこから...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法
どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?
西野精治
和食の深い秘密~なぜ身体に良いのか(1)和食の特徴と日本人
日本人は地球上最もベジタリアンだった?和食の7つの基本
小泉武夫
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
認知症とは何か(1)疾患の種類と対応
多くの認知症の原因は「脳のゴミ」の蓄積
遠藤英俊
睡眠:体、脳、こころの接点(1)睡眠とは?
なぜ睡眠は生きるために必要?脳にある覚醒中枢と睡眠中枢
尾崎紀夫
最新の腰痛医療(1)導入された二つの医療と慢性腰痛
高齢者だけじゃない! 若年層にも腰痛が増えている
菊地臣一

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
グローバル環境の変化と日本の課題(6)組織改革と課題解決のために
働き方改革の鍵はエンゲージメント、経営者の腕の見せ所
石黒憲彦