●介護離職を考えたBさんの事例
「50代からの親の介護」ということでお話をさせていただきます。
介護していた母親がガンになられたBさんの事例です。大阪にお住まいの50代の方で、両親と同居されていたシングル(独身)の方です。
この方は、もともと父親に介護が必要でした。父親のことは母親が介護されていました。その肝心な母親がガンを発症して入院、手術をすることになりました。
もう仕事を辞めて介護をするしかないのではないか。万事休す、とBさんは考えておられます。
Bさんにできることとは、何でしょうか。
会社を辞めることはない、と私は思います。これからBさんにはBさんの長い人生があります。Bさんの老後もやがては来ます。仕事を辞めると、ご自身のこれからの生活設計が完全に崩れてしまうことになります。
仕事は辞めないで親の介護をしていくことが重要ではないかと思うわけです。
●「辞めるのは最後の手段」という上司の言葉
Bさんの場合は、上司が本当にいい方でした。皆さまも上司の立場だったら、ぜひこのように言っていただきたいですね。
「辞めるのは最後の手段。とりあえず、介護休業を取り、体制を整えれば何とかなる」
こう言われたことによって、Bさんは介護休業を取られました。とりあえず40日間お休みを取られたそうです。そして、一時的に仕事から離れ、冷静になれたといいます。
父親は介護サービスを絶対使いたくないと言われていたのですが、Bさんは「私を助けると思って介護保険を使って」とおっしゃいました。まさに訴えられたわけです。
母親は入院後、手術を経て3週間で退院されました。結構早かったですね。以後、日中は両親二人で生活がまわるようになり、Bさんは仕事に復帰することができたということです。
3週間(21日間)入院されたのですが、Bさんが長めに介護休業を取られたので、母親が退院されてからご自分で少し様子を見たり、体制を整えて介護サービスを使えたりしています。もしかすると、母親にも介護保険を使われているかもしれません。
とにかく体制が整って、仕事に復帰できたということです。辞めなくて良かったですよね。このように、きっとなんとかなるのです。
●介護休業と介護休暇を使って離職しない道を探る
介護休業にはどんなものがあるかということですが、現在は(介護休業が)93日間取れて、3分割できます。Bさんの場合は40日取ったので、あと53日は残っていることになります。
その他、介護休暇があって、年に5日取れます。対象家族が2人以上だったら年に10日取ることができます。また、短時間勤務があったり、残業の免除があったりもします。
これらは法律で定められているものですから、もし社内規則に書かれていなかったとしても、法律である以上、こちらが優先されます。会社員として働いている方々も、パートの方々の多くも、取れることになっています。
こうした制度がありますので、早まって仕事を辞めるということをせず、上司や人事、総務の担当者などにご相談いただくのがいいのではないかと思います。
一つ、誤解をしないでいただきたいことがあります。よく誤解されるのですが、この制度が「育児・介護休業法」という法律で定められているため、育児と同じように考えられる人がいます。
育児では、自分で育児するために育児休業を取られます。だから、介護休業も自分で親などを介護するだけのために取るもの、と考えられるのです。
もちろん、それがいけないわけではないのですが、93日間あっても通常、介護はそれだけでは終わりません。介護休業を取って、自分でご両親の身体介護に献身しようとすると、介護休業が終わったときにどうするのか、ということになってしまいます。
●介護休業は仕事と介護の両立のための体制づくりに使う
介護休業は、もちろん緊急対応のために皆さまが直接介護されても悪いとは申しません。でも、そうではなく、仕事と介護を両立させるための体制づくりに向けて取っていただきたいと思います。
皆さまが仕事を休んでいる間に、例えばヘルパーさんのことを嫌だと言っている親にヘルパーさんに慣れてもらう。最初は自分が仕事を休んで横にいるときにヘルパーさんに来てもらい、「嫌な人じゃない」ということを納得してもらうとか。
また、デイサービスが嫌な父親あるいは母親が、「死んでも行くのは嫌だ」とおっしゃるかもしれません。こういう方には、皆さまが仕事を休んだときに何回か一緒にデイサービスに行...