松下幸之助の危機克服~熱海会談の真実
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
押し込み販売と手形の山…破局の危機を乗り越える熱海会談
松下幸之助の危機克服~熱海会談の真実(3)松下幸之助の涙の約束
佐久間曻二(元松下電器産業副社長/WOWOW名誉相談役/ぴあ終身相談役)
「やっぱり松下が悪かった」――松下幸之助による涙の謝罪で終わった熱海会談。この会談は、1961年に松下電器の社長から退き、会長としてPHPに専心していた松下幸之助が勇躍、第一線に戻り、代理店販売会社である全国の卸屋との絆を結び直した経営史上の一大事だった。ではなぜ3日間にわたってこの会談が行われたのか。その要因となったのは何なのか。当時の手記とともにその顛末を語る。(2023年12月1日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「私の中の松下幸之助」より、全4話中第3話)
時間:12分24秒
収録日:2023年12月1日
追加日:2024年6月24日
≪全文≫

●挫折した直訴状と約束手形


 (ここから)私が絡むわけですが、当時(昭和35年)、東京で家電販売を担当する営業所の一員として、寮生活をしていました。その寮で5、6人、同じぐらいの年代の大卒者たちが集まって話しているうちに、「おいおい、このままだと松下、おかしくなりゃせんか」「卸屋さんが潰れたら、松下はひどい目に遭うぞ」という話が出てきます。

 責任者である所長は、東京営業所が全国一の職責の営業所ですから、ここでうまくやると取締役になれるという大事な地位にある方ですから、いきおい「押せ押せ、行け行け」というタイプの方でした。そういう方に「危ないですよ」という話をしても聞いてもらえなさそうだ。ついては、相談役(当時は社長)に直訴しようかと。それで手紙を書こうということになり、私が手紙を書いたのです。

 ところが、中に一人、怖がって所長のところへ行った者がいました。「こういうことをしているのですが、どうでしょうか」と。それでみんなが呼び出された。「馬鹿者、なんということをするか」ということになって、(この計画は)消えてしまいました。そのせいかどうかは知りませんが、私は本社に転勤を命じられて、企画本部へ。「企画本部ならいいだろう」ということですが、そういう時期がありました。現場は、そういう窮状がずっと深化しているけれど、表面には現れなかったのです。


●営業至上主義の現場操作と隠蔽体質


 ところが、昭和39(1964)年、幸之助相談役(当時は会長)が大阪の枚方というところにある卸屋さんのお店へふらっと伺うのです。そうすると、「大将、見てや」と、4.5センチもある紙束を見せられる。

 「これは全部手形やな。今は全部、手形やねん(手形払いになっている)。これ、わし毎日見ているんだけど、10枚出せば必ず2枚くらい不渡り、延期手形が返ってくる。松下さん、あんたが知ってくれないと困る」という話をするわけです。

 相談役は勘の鋭い人ですから、これは危ないと思って、すぐに(会社へ)戻ります。藤尾専務に「松下の最大の債権者の卸屋さん、どのぐらいの債権をうちは持っているのか、調べてんか」と頼むと、8カ月持っていたわけです。驚きましたね。「この会社が潰れたら、うちの利益も全部飛んでまうな。これはなんとかせなあかんな」ということになるわけです。

 ただ、現場は松下正治社長に任せて、(相談...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
バブル世代の現実とこれからの生き方
バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある
江上剛
ハラスメント防止に向けた風土づくり(1)ハラスメントの概要
増え続けるハラスメント…その背景としての職場の特徴
青島未佳
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高