●測定法の洗練によって弥生時代の始まりが600年さかのぼった
―― 皆様、こんにちは。
藤尾 こんにちは。
―― 本日は藤尾慎一郎先生に弥生時代のお話をいただきたいと思っております。藤尾先生、どうぞよろしくお願いいたします。
藤尾 どうも、お願いします。
―― 藤尾先生には以前もテンミニッツTVで弥生時代の講義をいただきました。
藤尾 そうですね。
―― 今回はいろいろなことを扱っていただきますが、特に弥生人の生活の実態がどこまで分かっているのか。あるいはDNAの分析で縄文人と弥生人の違いがどうなっているのかということのお話をいただければと思っています。
まずお話をいただきますのが弥生時代はどんな時代かというところで、非常に興味深いですが、これは前の講義でもお話しいただきましたけれど、弥生時代が600年さかのぼった経緯と理由、また弥生時代の特徴、それから弥生時代にどういう文化があったかということでお話をいただければと思っています。
まずいちばん最初、弥生時代が600年さかのぼった経緯ということですが、もともとは何年ぐらいといわれていたのですか。
藤尾 もともと、60年前に、弥生時代が紀元前3世紀頃に始まったという説が出て、それがずっと教科書に載ってきたのです。だから私も高校の頃は紀元前3世紀頃と習いました。そのときは、まだ時代の指標となる特徴が弥生土器だったのです。
―― それは土器の形などで比べるということですか。
藤尾 そうですね。画面に出ていますけれど、縄文土器に比べると文様もないし、非常にシンプルな、機能的な土器です。これが出てくるのです。この時期からが弥生時代と決めていたのです。
ところが、今から40年前に、これまでみんなが縄文土器と思っていたその土器(の周辺)に立派な水田が出てきてしまったのです。
―― なるほど。
藤尾 それはこの弥生土器が出てきてから水田が始まるとみんな思っていたのに、「なんだ、いちばん最後の、(つまり)いちばん新しい縄文土器の時代に水田があるではないか」ということになって、それで学会は大騒ぎになったのです。
ちょうど私が大学院生の頃で、時代区分論争というのでしょうか。いつ頃から弥生時代としたらいいのか。今まで通り、弥生式時の...