弥生時代の歴史~研究最前線
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
弥生時代の前期はコメと合わせてアワやキビも作られていた
弥生時代の歴史~研究最前線(4)~農耕社会の成立~後編
藤尾慎一郎(国立歴史民俗博物館 名誉教授/総合研究大学院大学 日本歴史研究専攻 名誉教授)
九州北部で始まった水田稲作は、すぐに日本全国に伝播していったわけではない。250年ほどたって、ようやく中国地方や九州南部へ広がり、その後、徐々に日本各地に広がっていった。ではどのような形で水田稲作文化が伝播していったのだろうか。近畿地方、中国地方、四国地方、中部地方の遺跡から得られた考古学的証拠をもとに詳しく説明する。(全12話中第6話)
時間:7分42秒
収録日:2019年6月4日
追加日:2019年10月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●近畿地方では弥生人は早い時期からアワやキビの栽培を行っていた


 これまでお伝えしてきたように、水田稲作は九州北部で始まりましたが、すぐにはそれ以外のところに拡大していきませんでした。250年ほどたって、ようやく中国地方や九州南部などへと水田稲作が広がるようになりました。

 ここでは、滋賀、鳥取、徳島の例を取り上げて説明します。

 近畿地方の東端、滋賀県の琵琶湖のほとりにある竜ヶ崎A遺跡で発見された土器の内面に炭化物が見つかりました。詳しく調査すると、調理用土器の底にキビが生煮えで残ったものであることが分かりました。これは、竜ヶ崎A遺跡に住んでいた人々が実際にキビを食べていた考古学的証拠と考えることができます。

 九州北部では、アワやキビを食べていた証拠はもう少し後の時代にならなければ見つかりませんが、近畿地方では比較的早い時代からアワやキビの栽培が行われ、実際に食に供されていたことが分かります。


●中国地方では紀元前8世紀頃から水田稲作が始められていた


 次に、山陰地方の鳥取平野で発見された稲作関連遺跡である、本高弓ノ木遺跡を紹介します。

 ここでは、小河川に対して水が漏れないように大きなケヤキの木を倒して、プール状のものを作りました。木が歪むのを防ぐために、木製農具の未完成品を水に浸けて保存していたと推測されます。このように貯木場として用いられていたと考えられる遺跡が見つかりました。

 水田の証拠は見つかっていませんが、貯木場は見つかりました。このケヤキの木に対して酸素同位体年輪年代測定法を用いると、紀元前8世紀の中頃に伐採されたことが分かりました。もともと伐採されたものが貯木場の構築物として用いられたのか、別の目的で使われていたものが構築物の道具として用いられたのかはよく分かりません。しかし、少なくとも紀元前8世紀以降に鳥取平野でも水田稲作が行われていた証拠だと考えられます。

 山陽地方の岡山地域でもほぼ同じ時期に水田稲作が始まったことが分かっています。つまり、中国地方では日本海側と瀬戸内海側の両方で、ほぼ同じ時期に水田稲作が始められていたということです。


●弥生前期、西日本ではコメと組み合わせてアワやキビも作られていた


 次は四国に移ります。徳島平野にある庄・蔵本遺跡で見つかった畑の跡に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎