弥生時代の歴史~研究最前線
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
最初に弥生時代に伝わった金属器は、鉄器ではなく青銅器
弥生時代の歴史~研究最前線(5)~金属器の登場~前編
藤尾慎一郎(国立歴史民俗博物館 名誉教授/総合研究大学院大学 日本歴史研究専攻 名誉教授)
東北地方北部では、他の地方とは異なる形態を取っていたという。可能な限り縄文文化を継続しつつ、水田という技術だけ受け入れていたというのだ。また、朝鮮半島南部の文化も、ほとんど受け入れずに縄文文化を続けていたが、九州北部地方では積極的に受け入れていく。朝鮮半島からどのような文化が伝来したのか。なかでも金属器の事情について詳しく解説する。(全12話中第7話)
時間:10分23秒
収録日:2019年6月4日
追加日:2019年10月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●東北北部の方が中部地方・関東南部地方より水田稲作の開始は早かった


 ここから第3章「金属器の登場」に入ります。これまでお話しした弥生時代は、金属器がなく石器だけの時代でした。今から50年ほど前の教科書には、弥生人は水田稲作を行い、最初から鉄器を利用していたと書かれていたかと思います。しかし、水田稲作の始まりが約500年さかのぼった結果、金属器を伴わないコメ作りの生活の存在が明らかになってきました。

 金属器の話に入る前に、東北地方北部の水田稲作についてお話しします。先ほど日本で最も遅く水田稲作が始まった中部地方・関東地方のお話しをしましたが、そうすると東北北部の方が水田稲作の開始が早かったということになります。普通、より寒い東北地方の方が水田稲作の開始は遅れると考えがちですが、実は東北地方の日本海側では中部地方・関東地方南部に先んじて紀元前4世紀に水田稲作が始まったことが分かっています。


●世界最北端の砂沢遺跡から分かる東北北部の水田稲作の特徴


 青森県弘前市の砂沢遺跡で、紀元前4世紀の水田跡が見つかりました。これは先史時代の遺跡としては、北緯40度を超える世界最北端の水田跡です。右側に見つかった水田の写真があります。手前が高く奥が低い、つまり手前から奥に向かって傾斜しているという構造です。ここから7区画の水田跡が見つかりました。

 ただし、これらの水田は先ほどから説明しているような灌漑施設は持っておらず、傾斜を利用して手前から奥へと水を流していたとされています。この青森の水田跡の特徴は、もともと縄文人が住んでいたむらのすぐそばに造ったという点です。

 先ほど福岡平野の例で説明しましたが、縄文人が利用していなかった場所に突然、水田が現れることが多いのです。西日本、たとえば近畿、あるいは関東南部ではそうした傾向が見られますが、青森だけはもともと縄文人が住んでいた領域内に水田が出現します。この事実は、誰が水田稲作を始めたのかという問題と大きく関わってきます。

 他にも大きな特徴として、この砂沢遺跡は10年から12年という比較的短い期間しかコメを作っていないことが分かっています。また、西日本で水田稲作を行う遺跡でよく発見される木製農具や、朝鮮半島系の伐採用の斧などの、大陸的な道具や要素が、一切見られないのも特徴です...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹