弥生時代の歴史~研究最前線
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
奴国の中心地・博多湾岸に弥生時代を代表する遺跡がある
弥生時代の歴史~研究最前線(7)~博多湾岸諸国~
藤尾慎一郎(国立歴史民俗博物館 名誉教授/総合研究大学院大学 日本歴史研究専攻 名誉教授)
弥生時代後期の遺跡といえば佐賀県の吉野ヶ里遺跡が有名だが、奴国の中心地であった博多湾岸諸国のなかで福岡県の比恵・那珂遺跡群は吉野ヶ里遺跡とは異なり、より都市的な発展を遂げたのではないかと考えられている。ここではさまざまな考古学的資料が出土しており、その経済的な豊かさや手工業の発展度合から、弥生時代を代表する遺跡として知られている。今回は弥生時代の最も発展した集落街に住んだ人たちの生活をひもといていく。(全12話中第11話)
時間:11分06秒
収録日:2019年6月4日
追加日:2019年11月4日
カテゴリー:
≪全文≫

●「弥生時代=吉野ヶ里遺跡」というイメージを覆す比恵・那珂遺跡群


 それでは、第5章として、弥生時代後期、すなわち紀元前後の、奴国の中心地であった博多湾岸諸国の遺跡の話をいたします。

 この地図は、博多湾に沿って分布する遺跡の一覧表です。図の中央にあるのは、金印が発見された志賀島です。南側の海岸線に沿って多くの弥生時代の遺跡がありますが、その中心となったのが比恵・那珂遺跡群です。弥生時代後期というと大きな環壕を持った、吉野ヶ里遺跡などをイメージされる方が多いと思います。

 しかし、比恵・那珂遺跡群はそれとは非常に異なります。大きな違いとしては、方形の区画と道路が整備されていたと考えられる点が挙げられます。吉野ヶ里遺跡のように弥生時代の農村といった趣ではなく、むしろ街に近い遺跡です。

 ただ、福岡市は戦前から開発が進んでいるので、吉野ヶ里遺跡のように一つの丘陵を一気に発掘調査して、集落全体をイメージする遺跡は、都市化が進んでいる博多にはありません。そのようなこともあって、弥生後期の遺跡としては吉野ヶ里遺跡が代表として扱われがちです。しかし、実はより進んだ地域では、遺跡の景観はより都市的な機能を持つ形態をしていたのではないかと考えられています。


 この丘陵を南側から見た図面が右側の図面です。左側はイラストになります。この比恵・那珂丘陵に初めて人が住み始めたのは、先ほどお話しした最古の環壕集落が出てくる紀元前9世紀です。右側の図面でいうと、左側の下の方に「弥生早期」と書いてある場所がありますが、最初にここに人が住み始めます。縄文時代には、この丘陵上、人は全く住んでいませんでした。

 紀元前9世紀にここに環壕集落が形成されましたが、100年ほどで廃絶してしまいます。紀元前8世紀に比恵・那珂丘陵の中心地は北に移動し、そこから時代が下るにつれて、徐々に丘陵全体が開発されるようになります。博多湾から川を上って、運河に入り、北の丘陵の入り口まで到達し、さまざまな経済活動を行っていたことが確認されています。


●比恵・那珂遺跡群から出土した考古学的試料


 弥生時代の中期、紀元前3世紀になると、吉野ヶ里遺跡で多く見つかっている甕棺...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(3)プロジェクトのすすめ方
PDCAサイクルを回すための5つのプロセスとそのすすめ方
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦