弥生時代の歴史~研究最前線
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「酸素同位体比年輪年代法」で弥生時代の開始年代確定へ
弥生時代の歴史~研究最前線(2)酸素同位体比年輪年代法
藤尾慎一郎(国立歴史民俗博物館 名誉教授/総合研究大学院大学 日本歴史研究専攻 名誉教授)
炭素14年代測定法を用いて、藤尾慎一郎氏のグループは弥生時代の開始年代が500年さかのぼることを発表したが、開始年代にはまだ議論がある。本講義では、新たに開発された「酸素同位体比年輪年代法」と呼ばれる方法について解説する。開始年代が確定しても、日本全国が一斉に弥生時代へと移行したわけではない。文化は徐々に広がっていくという点にも着目していく必要がある。(全12話中第2話)
時間:8分53秒
収録日:2019年6月4日
追加日:2019年10月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●弥生時代はどのように確定されているのか


 上のグラフをもう少し詳しく見てみると、弥生時代の始まりは500年さかのぼったにもかかわらず、後期の方はほとんど変わっていないことが分かります。なぜでしょうか。これは炭素14年代測定法ではなく、考古学的な手法で導き出された年代だからです。どういう方法かというと、日本の国内で製作年代の分かっている試料が日本で出土すると、それを用いてその時期がいつかと推定するのです。

 日本の遺跡で出土される製作年代が分かっている試料の中で、最も古いものは、中国の前漢で作られた鏡です。この鏡が出土するようになると、そこからあとの年代では、炭素14年代測定法を用いても同じ年代だと判断されます。この理由で、弥生時代の後期の年代は変化していないのです。

 逆にいうと、さかのぼってしまった弥生時代の始まりは、そのような製作年代の分かっている試料がない状態で、研究者がとりあえず紀元前300年と仮定しておいていたものです。しかし、この仮の年代が50年間用いられてくる中で、固定化されてしまいました。そのため、われわれが500年さかのぼると発表した際に、大きな反響を呼んだのです。

 縄文時代の場合には、製作年代の分かっている試料は一切ありません。そのため、全て炭素14年代測定法で年代を決定しています。縄文時代の年代がほとんど変わっていないのは、それが理由です。ただ、土器の出現年代については、3500年古いとされたものは50年前から4000年ほど古い年代ということになっています。

 この表は、弥生時代の古い段階の土器型式名をまとめています。土器型式名は、考古学者が時間の尺度に用いています。日本の考古学では、土器の変化をもとにどのように社会が変化していったのかを推測しています。土器はその重要な試料となります。したがって、ある土器の年代が分かれば、その土器が発見された住居の年代も分かります。ですので、われわれは土器に付いている炭化物の炭素14年代を測り、土器型式ごとに年代を決めていきました。

 土器型式名の横に炭素14年代という行があります。ここから紀元前10世紀などの西暦を割り出したものが、その横の開始年代になります。このように、われわれは紀元前10世紀前後に弥生時代が始まるという説を...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(2)「ほめる」技術
男性は「ほめる」のが苦手?傾聴から始まる「ほめる」技術
三谷宏治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ