弥生時代の歴史~研究最前線
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
古墳時代成立の鍵となるのは鉄ではなく威信財や祭祀
弥生時代の歴史~研究最前線(7)~古墳時代への胎動~
藤尾慎一郎(国立歴史民俗博物館 研究部 教授/総合研究大学院大学 日本歴史研究コース 名誉教授)
弥生時代から古墳時代へと弥生社会はどのように変化していったのか。従来は鉄などの実用的な道具の入手が九州北部から近畿に移ったことで、近畿を中心とした巨大な政治的権力が成立し古墳時代が始まったとされてきた。しかし、考古学的資料の検討を行うと、鉄ではなく威信財や祭祀の分布が、古墳時代の開始に重要な役割を果たしていたことが明らかになってきた。前方後円墳は、倭国内の各地で行われていた風習を一つに合体し、新たな文化装置として創造された大事業の一環だったのだ。(全12話中第12話)
時間:13分26秒
収録日:2019年6月4日
追加日:2019年11月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●朝鮮半島からの鉄の入手ルートが近畿へ移ったことで古墳時代の成立を説明する議論は考古学的事実に合致しない


 それでは、最後の講義、第6章「古墳時代への胎動」に移ります。古墳成立前夜のお話です。

 これまで古墳時代に至るまでの過程はどのように説明されてきたかというと、主に鉄と墓から説明されてきました。簡単にいうと、弥生時代の中・後期には九州北部地方の人々が圧倒的に多量の鉄を掌握していました。

 ところが、ある時、近畿と瀬戸内の連合体が九州北部と戦いました。これは、当時最大の戦乱であり、「倭国大乱」と呼ばれます。これを契機に、鉄が東に集中するようになり、倭国の政治的権力が西から東に移ります。そして、その東の集団が古墳成立の母体となった、と説明されてきたのです。

 しかし、先ほど比恵・那珂遺跡に関して述べたように、九州北部の鉄の量は尋常ではありませんでした。これは倭国乱後も変わりません。つまり、鉄の中心が西から東に移るという現象は、観察されていないのです。戦乱前と同様に、九州北部の鉄の保有量は圧倒的で、鉄をめぐる優位性は変わっていません。ですので、上の説明は現実に即していません。

 この図面は、その優位性を示しています。九州・中国地方の集落から出てきた鉄器の量を示したものです。このなかでも最も重要な鉄器は、先ほど説明した土木用の鉄器です。鍬や鋤の先に取り付けて土を掘る、「鉄刃(てつじん)農具」と呼ばれるものです。

 福岡県では、竪穴住居の大きさにかかわらず、基本的にどの住居からもこの鉄刃農具が出土します。九州中部の熊本辺りでも多くの鉄器が見つかっていますが、大きな住居からしか鉄刃農具が出てきません。さらに、岡山では集落全体で1、2点ほどしか出土しません。近畿ではほとんど出土例がありません。ここからも分かる通り、九州北部の鉄の優位性は倭国大乱後も変わらないので、これまでの説明は現在では分が悪くなってしまいました。


●西から東に比重が移ったものは実は鏡などの「威信財」だった


 それに対して、明らかに分布の中心が西から東に移るものがあります。それは、鏡です。鉄は、武器であり農耕具であり、すなわち利器、実用品です。一方、鏡や玉は、それを持っているからといって戦いに勝てるわけではなく、土地の開発が進むわけでもあり...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
織田信長の「天下」とは…最新研究で激変する人物像・時代像
柴裕之
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
織田家中一の武略者…『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の知られざる実像
黒田基樹
昭和の名将・樋口季一郎…キスカ・占守島編(1)キスカ島撤退作戦
5200人の将兵を救え…米軍も称賛した「キスカ島撤退作戦」の奇跡
門田隆将

人気の講義ランキングTOP10
昭和の名将・根本博…内蒙古・終戦後の戦い(3)戦犯は児戯に類す――丸一陣地の死闘
「諸君、私を戦犯にするというが如きは児戯に類することである」
門田隆将
中国春秋戦国時代と始皇帝(6)秦の恵文王、昭王、荘襄王の時代
秦による中国統一への道…恵文王、昭王、荘襄王が行なったこと
鶴間和幸
日本の財政の真実を検証する(6)「経済成長3つの源泉」の具体策
現代日本で「経済成長3つの源泉」の具体的プランを考えると?
宮本弘曉
老子の神髄(1)「絶対自由の境地」を求めて
『老子』が求める「絶対自由の境地」とは?…そして創造長寿へ
田口佳史
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(1)あらすじと賢治の原稿
未完の長編『銀河鉄道の夜』の魅力と宮沢賢治の思想に迫る
鎌田東二
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(3)全皇帝の4分の3は「非漢族」
6000万人の漢人が、三国志の戦乱後に400万人台に…衝撃の人口変動
宮脇淳子