弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化
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花粉、炭素、酸素同位体…重複分析で分かる弥生時代の環境
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(3)弥生時代の環境と気候
歴史と社会
藤尾慎一郎(国立歴史民俗博物館 名誉教授/総合研究大学院大学 日本歴史研究専攻 名誉教授)
古代の気候を推測するために、研究者はさまざまな方法を駆使してきた。海水面の位置をもとにした「弥生の小海退」説をはじめ、花粉や炭素濃度などから行う分析法には難点もある。その難点を克服した方法によって見えてきた弥生時代の気候はどのようなものなのだろうか。今回は弥生人が生きた環境に焦点を当てて解説する。(全11話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:17分52秒
収録日:2024年7月29日
追加日:2025年4月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●「弥生の小海退」説の難点


―― では、続きまして「弥生人が生きた環境・気候」というところで、まさに古気候の復元とか、寒冷化と稲作の関係、それからどのような植物が自生していたかというところになります。最初は「弥生の小海退」ということです。

藤尾 もともと、弥生時代が始まった頃、つまり水田稲作が始まった頃は寒かったのではないかという説が1960年代からあったのですね。

 その根拠として、その頃は海が沖のほうに退いていました。それは「海退」といい、「弥生の小海退」というのです。なぜ小海退というかというと、小海退があると大海退があるのかということなのですが、最終氷期のいちばん寒かったときは120メートル下に海がありますので、それは大きいですよね、大海退ですから。こちらはわずか数メートルなので、それで小海退というのです。

 その根拠は、弥生土器が出てくる包含層があるのですけれど、それが黒っぽい色をしているのです。弥生土器が含まれている層です。これはだいたい植物が生えていて、それが腐食すると黒っぽい土になるわけですけれど、それがずっと海の中までずっと続いていることが三河地域で確認されたのです。

 今では2メートルぐらい海水面の下のところまでずっとそれが続いているので、この植物が生えていた頃は寒かったのではないか。だから、(今は)海の底にあるわけなのですけれど、土器も含め、それを炭素14年代(測定法)で調べたら、弥生時代が始まった頃なので、それで弥生時代が始まったのは寒かった(頃)ではないかとなり、小海退を根拠にしていたので「弥生の小海退説」と言っていたのです。

 その後、先ほども出ましたように、弥生時代は紀元前3世紀頃始まったと、年代がその後についてきますので、紀元前3世紀頃は寒かったとなっているわけです。

 なので、もともと寒かったことと紀元前3世紀は無関係だったわけなのですけれど、考古学者は紀元前3世紀頃に弥生時代が始まるというので、では弥生時代が始まった頃が寒かったのですよねという話なのです。その話が20世紀ずっと続いていたのです。

―― なるほど。

藤尾 ところが、海面が上がったり下がったりというと、基本的に海は地球全体につながっていますので、それがローカルな気候変動...

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