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生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(9)弥生人の「生の世界」

藤尾慎一郎
国立歴史民俗博物館 名誉教授/総合研究大学院大学 日本歴史研究専攻 名誉教授
概要・テキスト
弥生時代の衣食住には、いったいどんな文化があったのだろうか。土器やスタンプ痕の分析から浮かび上がる弥生人が生きていた世界、その生活をひもとくと、農耕の発展の経路や死生観など当時のさまざまな文化の背景が見えてくる。(全11話中第9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:16:14
収録日:2024/07/29
追加日:2025/05/14
カテゴリー:
≪全文≫

●紀元前3世紀にはあった文様のある服や織機


―― では先生、続きまして生きている人、生の世界ということですね。

藤尾 次回が死の世界になるので、今回は生きている世界ということになります。

―― はい。

藤尾 まず衣食住です。これは考古学者がいちばん弱いところです。

―― なぜですか。

藤尾 有機質のものが残っていないからです。

―― なるほど。

藤尾 ですけれど、こういう土器で表されたりするのです。これは1つの例なのです。1世紀中頃ぐらいの話なので、弥生時代が始まって1000年以上たってからのお話なのですが、貫頭衣というものを、皆さん、聞いたことがあると思います。胴の真ん中に穴を開けてかぶるというものです。

 当時の弥生時代からの遺跡に出てくる、布を織る織機です。織機から見ると、幅33センチ、1尺ちょっとというのが限界だそうです。2枚並べると66センチになります。

 これをさらにつないでいくと、ある程度長いきれになります。その真ん中に穴を開けて、上からかぶって、服になっていくのですが、もう1つ、こういった土製品から分かったのは筒袖です。袖が筒状になっています。こういうものがすでに紀元前の3世紀には出ているということが、吉野ヶ里の調査から分かっています。

 しかもこの土製品自身はいろいろな文様がついています。だから、服も無色ではなくて、何か模様がついているということです。腰に帯がされていて、1980年代の女性のように肩パッドが入っているようなものが、すでにあったということが最近分かってきているのです。


●炭素と窒素の比率から分かる食生活や農耕事情


―― それで(次は)食生活ですね。

藤尾 食い物なのですけれど、これも有機質ですから、基本的に残っていないのですけれど、何から分かるかというと、骨から分かるのです。

―― そうなのですか。

藤尾 骨の中のコラーゲンの、窒素と炭素の比率を調べるのです。

 窒素の比率が高いと、海産物をたくさん食べているとか、それから炭素の中でも、C3植物とC4植物というものがあって、C4植物というのはアワ・キビなのです。C3植物というのはドングリとかコメなのです。なので、C4のほうに寄っているとアワ・キビ...
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