●紀元前3世紀にはあった文様のある服や織機
―― では先生、続きまして生きている人、生の世界ということですね。
藤尾 次回が死の世界になるので、今回は生きている世界ということになります。
―― はい。
藤尾 まず衣食住です。これは考古学者がいちばん弱いところです。
―― なぜですか。
藤尾 有機質のものが残っていないからです。
―― なるほど。
藤尾 ですけれど、こういう土器で表されたりするのです。これは1つの例なのです。1世紀中頃ぐらいの話なので、弥生時代が始まって1000年以上たってからのお話なのですが、貫頭衣というものを、皆さん、聞いたことがあると思います。胴の真ん中に穴を開けてかぶるというものです。
当時の弥生時代からの遺跡に出てくる、布を織る織機です。織機から見ると、幅33センチ、1尺ちょっとというのが限界だそうです。2枚並べると66センチになります。
これをさらにつないでいくと、ある程度長いきれになります。その真ん中に穴を開けて、上からかぶって、服になっていくのですが、もう1つ、こういった土製品から分かったのは筒袖です。袖が筒状になっています。こういうものがすでに紀元前の3世紀には出ているということが、吉野ヶ里の調査から分かっています。
しかもこの土製品自身はいろいろな文様がついています。だから、服も無色ではなくて、何か模様がついているということです。腰に帯がされていて、1980年代の女性のように肩パッドが入っているようなものが、すでにあったということが最近分かってきているのです。
●炭素と窒素の比率から分かる食生活や農耕事情
―― それで(次は)食生活ですね。
藤尾 食い物なのですけれど、これも有機質ですから、基本的に残っていないのですけれど、何から分かるかというと、骨から分かるのです。
―― そうなのですか。
藤尾 骨の中のコラーゲンの、窒素と炭素の比率を調べるのです。
窒素の比率が高いと、海産物をたくさん食べているとか、それから炭素の中でも、C3植物とC4植物というものがあって、C4植物というのはアワ・キビなのです。C3植物というのはドングリとかコメなのです。なので、C4のほうに寄っているとアワ・キビ...