弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
実は考古学者と人類学者で違う!? 渡来系弥生人の定義
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(6)弥生人のDNA
藤尾慎一郎(国立歴史民俗博物館 名誉教授/総合研究大学院大学 日本歴史研究専攻 名誉教授)
後の二重構造説の見直しにつながっていく「ヤポネシアゲノムプロジェクト」は、これまで手薄だった弥生人のDNA分析によって、古代人の分布について新たな見方を示した。そして、鳥取県にある青谷上寺地遺跡の調査では、現代日本人のDNAが2000年前には出来上がっていた可能性が見えてきた。どういうことなのか。詳しく解説する。(全11話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分10秒
収録日:2024年7月29日
追加日:2025年4月23日
カテゴリー:
≪全文≫

●二重構造説の見直しにつながった「ヤポネシアゲノムプロジェクト」


藤尾 今度は弥生人だったらこれがどうなのかということなのですけれど、最初にお見せするのはまだDNAが入る前で、骨だけからやっていたときの話です。

 そのときには九州で甕棺墓(かめかんぼ)というものから弥生時代の骨がたくさん出てきたので、九州がいちばん進んでいたのです。そうすると、3種類の人たちがいる。渡来系弥生人と、縄文の形質が強い西北九州の沿岸部にいる弥生人と、種子島とか鹿児島の南にいる南九州(弥生人)の3つの人がいるということが分かっていたのです。

 ですから、渡来系弥生人は渡来してきた人と縄文人が混血した、いわゆる二重構造説に乗っていた人たちです。それに対して、西北九州(弥生人)、南九州(弥生人)は混血していない、縄文そのものが残った人たちと考えられていました。ところが、DNA分析をやると違っていたということになるのです。

―― これはどう見ればよろしいのでしょうか。

藤尾 これは、2018年から私たちが行いました「ヤポネシアゲノムプロジェクト」という5年間やった研究で、実際に分析した古人骨の分布図です。

 水色の縄文系の人たちとか、紫色の渡来系の人たちとか、それから朝鮮半島の人たちも(分析を)やったわけなのです、選別して。(ただ)DNAはなかなか残っていないので、とにかくやらせてもらうところは手当たり次第にやった結果、得られたのがこれだけという意味でしかないわけですが、(それでも)これだけのことをやりましたということになるわけです。

 ここで、中国北部系の赤は実は1カ所しかありません。朝鮮半島の南部にある「安島」と書いてアンドンという(ところ)ですけれど、そのアンドン貝塚から出てきた6千数百年前の人骨から得られたもので、これは100パーセント中国北部のDNAです。

―― なるほど。

藤尾 もともと、二重構造説で想定されていたのはこういう人たちなのです。100パーセント中国北部系の人です。でも、「その人はもう縄文早期からいましたよ。しかも朝鮮半島のいちばん南にいましたよ」という話です。二重構造説は弥生以降を想定していますから、それをさかのぼる3000年も前から実はもういましたよという話が、1つ分かります。

 ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建