●財務省の為替介入にみる円高への転換の機運
最後に2022年の円安加速を受けて、この2022年の9月に日本財務省の円買い介入が始まっておりますので、通貨政策に関わる多少補足的な議論をして、この構造的な円安シリーズを終えたいと考えております。
まず今回の円買い・ドル売り介入なのですが、基本的には日本は円高のリスクにさらされていましたので、円売り・ドル買い介入が多かったのですが、日本が金融危機に陥った1997~98年ぶりに円買い介入が行われたのが、この2022年です。
介入金額は2022年の9月、10月の合計で既に9兆円くらいです。10兆円に迫る円買い・ドル売り介入ということで、1997、8年の規模を上回ってきています。また、円売り・ドル買い介入と比べてみても、かなり大きな介入になってきているような状況です。このあたりに、私がこのシリーズでお話ししてきた構造的な円安から構造的な円高への転換といったところもうかがえようかと思います。
●アベノミクスとレーガノミクスの類似点:通貨政策と金融政策の一体化
こういった円安の背景になっているのは2012、3年くらいに始まったアベノミクス以降の日本の政策です。特に日銀の金融緩和というものがありまして、それをレーガノミクスとの対比において示しているものが、この一覧表です。
アベノミクスとレーガノミクスは、インフレの撲滅を目指したレーガノミクスとデフレの克服を目指したアベノミクスということで、方向性としては、逆を向いているわけなのですが、いくつか非常に似ている部分があったということです。
まず、経済の回復について、当時のアメリカにとってみると、ソ連との冷戦に勝たないといけないという地政学的な問題があり、一方で、日本にとっては中国の台頭もあり安全保障を強化しないといけない中で、経済を再び強くしようという考え方がありました。その安全保障のために経済の回復が求められているというのが、一つのポイントだと思います。
一方で、アメリカでいうインフレ、日本でいうデフレという通貨の問題に対して、非常に強い通貨政策を発動しました。アメリカでいうと、当時は基本的にドル高政策であったわけで、日本においては名目的にはそれを認めませんが、黒田総裁率いる日銀の金融緩和が円安政策を取っ...