●今後の世界経済を理解するための重要ポイント
これからの世界経済、IMF、そして日本経済の今後をどのような視点で捉えていくといいのか、お話をしていきたいと思います。
この図にあります通り、2022年10月時点では、IMFは2023年の(世界全体の)成長率見通しを2.7パーセントと見ていることを頭に入れておいてください。
そして次に、図表にあります通り、世界経済への視座には、5つのポイントが大事になると思います。
2023年の世界経済のマクロ動向を見ると、IMFが2022年秋に予測した2023年の2.7パーセント成長はさらに下方に修正される可能性が高く、米国、中国、欧州ともに経済の伸びは低迷するだろうと予想されます。その背景には、インフレの持続による実質経済成長の押し下げや、各国中央銀行による金利の引き上げに伴う需要の減退、さらには国・企業・家計ベースにおける債務負担の増加が挙げられるでしょう。特に米国と欧州では金融政策の判断が注目されます。中国については、断続的なパンデミックの流行と不動産市場の悪化により、成長モメンタムは依然として弱いと考えられます。
2023年にはインフレがピークを迎え、金利を引き下げる余地が生まれるとの市場の見方がある一方で、インフレを徹底的に抑えることこそが最大の課題であり、そのためには金利の引き上げの継続、あるいは引き上げた金利を一定期間継続することが重要だという欧米の金融当局との見方があり、今のところこの両者の乖離は埋まっていないようです。
次のポイントは、世界的な地政学的リスクの高まりに伴う分断の圧力が高まり、数十年にわたるグローバル化の進展から得られた成果の一部が失われる可能性があるということです。この点については現在、世界でさまざまな議論が戦わされています。
例えば、ユーラシア・グループのイアン・ブレマー氏は、「グローバリゼーションは後退してはいるものの、経済統合の終焉というより、世界は地政学的リスクに直面し、グローバリゼーションは漂流しているのである。1970年代から2008年の世界金融危機まで続いた『ハイパー・グローバリゼーション』の時代は、覇権国である米国が貿易自由化と世界統合のプロセスをトップダウンで推進した、歴史的に見ても特異な出来事であったが、そ...