世界経済の見方とIMFの役割
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
地政学的緊張が招く世界経済のダウンサイドリスクとは
世界経済の見方とIMFの役割(4)地政学リスクによるインフレの正体
田中琢二(元・国際通貨基金(IMF)日本代表理事)
パンデミック危機から回復基調にあった世界経済は、地政学的リスクという要因によって再び混迷の度合いを深めている。当初の予想に反して長引くウクライナ戦争もその一因となって、世界のエネルギーや食料の高騰、サプライチェーンの分断などを招き、インフレ期待が増進し、やがて実質経済成長に大きな影響を及ぼすことになる。そうした今後の経済のダウンサイドリスクについて、IMFの分析をもとに解説する。(全6話中第4話)
時間:12分21秒
収録日:2023年1月11日
追加日:2023年2月23日
≪全文≫

●金利上昇で市場調整の波が広がる


 今後の経済のリスクの所在、そして、そうしたリスクが実質経済成長にどのような経路で影響を与えるのかについてお話をします。

 図の左上の2つ、パンデミックがさらに蔓延するのか、そしてウクライナ戦争はいつまで続くのか、あるいは他の地政学的リスクが顕在化するのかという問題があります。パンデミックが収まらないと、生産に支障をきたし供給が制約されます。また、活動が制限される中で貯蓄が高まり、買い控えていた消費者が、買い控えを終えて一気に消費に走るペントアップ需要の増加が見られ需給のバランスが崩れ、インフレ圧力になります。

 次に、ウクライナ戦争や他の地政学的リスクの高まりにより、サプライチェーンの分断や再構築の必要性に迫られます。サプライチェーンの分断の中で適材の人材を見つけるために、人件費が高くなる方向に働きます。サプライチェーンの再構築は日本でもその必要性に取り組んでいる企業もありますが、時間がかかることですぐに解決できず、サプライチェーンの分断は当面続くことになります。さらに、エネルギー価格や食料価格の高止まりが見られることになり、これもインフレ圧力になります。

 こうしてインフレが進むと当然金融政策が対応し、短期金利とともに長期金利も上昇する可能性が高くなります。そうすると、国・企業の債務が増大します。金利負担に耐えきれず、債務の持続可能性に問題が出てくる国が増え、債務問題もこれからより顕在化するおそれがあります。金利が高くなりますから、利益を生んでいない生産性の低いゾンビ化(Zombification)した企業等は返済に困難をきたします。

 これらの企業が債務不履行になり、返済ができない状態、つまりインソルベンシーに陥り、そうした企業の数が増えますと金融機関側は償却せざるを得なくなり、自己資本が毀損します。そうした資本の毀損に耐え得るのか、金融システムの強靭性が問われることになります。この点、リーマン・ショック後、金融機関の自己資本は充実しているので、いまのところ金融機関サイドの懸念はありませんが、どのくらいのサイズで不良債権が増加するか注意する必要があります。

 さらにインフレが進み金利が上昇すると、金融資本市場、並びに住宅市場も大きな影響を受け、価格の調整、いわゆるリプライシン...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
国際地域研究へのいざない(1)地域研究の意味とイスラエル研究
なぜ経済学で軽視されてきた「地域研究」が最高の学問なのか
島田晴雄
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(1)米を食べる日本人と『分裂病と人類』
日本人の生きづらさの特徴は?~中井久夫著『分裂病と人類』
與那覇潤
編集部ラジオ2026(8)10分解説!第二の人生の仕事革命
年金の「働き損」解消時代!第二の人生を充実させる方法とは
テンミニッツ・アカデミー編集部
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(6)自由は大切だが叡智が必要
弱者を抑圧する自由より、叡智によって制約される自由を!
賴住光子
『孫子』を読む:地形篇(3)逆命利君の教えと絶対的勝利の条件
逆命利君か従命病君か――漢の時代から伝わる重要な戦略論
田口佳史
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考
出口治明
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博