世界経済の見方とIMFの役割
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
デフレ懸念のあった世界経済、なぜインフレが起こったのか
世界経済の見方とIMFの役割(2)金融市場の動向とインフレの懸念
田中琢二(元・国際通貨基金(IMF)日本代表理事)
パンデミックによる世界経済危機が底の見えないデフレ懸念を増大させると、主要国とIMFは危機回避の積極政策を提言・実行し、各国もそれに続くようになった。すると世界経済は緩やかに回復基調をたどり始め、金融市場では早くもパンデミック後を見越して株価が上昇するなど、今度はインフレを懸念する見方も出始める。今回は金融市場の動向とインフレの懸念について解説していただく。(全6話中第2話)
時間:9分44秒
収録日:2023年1月11日
追加日:2023年2月9日
≪全文≫

●「異時点間のトレードオフに気をつけろ」というIMFのメッセージ


 前回、2020年の初めの予測と、その後パンデミックのマイナスの影響に対して徐々に政策のプラスの効果が出てきたため、予測そのものが変化したことを説明しました。さらに、2020年10月の世界経済見通しでは、2020年はマイナス4.4パーセントの成長ですが、2021年には緩やかな回復基調という認識にあったということも説明しました。

 一方、今回は、マクロの成長率から離れて、金融市場の動向を見ていくことからスタートします。

 金融資本市場においては、2020年の春に株式市場が急落した後、経済の指標は低迷しているものの、2020年夏以降、株式市場の上昇が顕著になってきます。市場はパンデミック後の回復を早くも織り込んでいるのだという説明がなされていました。このような状況にあって、IMFの金融安定報告書の分析が面白いので紹介したいと思います。

 「ディスコネクト(Disconnect)と3つの異時点間のトレードオフが懸念する問題だ」というのです。

 ディスコネクトとはどういう状況か。簡単にいえば、金融市場におけるリスク資産価格の上昇と実体経済状況の間に、乖離があるのではないかということです。実体経済は伸びていないのに、資産価格だけが上昇するという両者の乖離が大きくなればなるほど、いずれリスク資産価格の大幅な下落、調整、すなわち株式市場や債券市場の大幅な調整を招くリスクが高まるのではないかということでした。

 また、3つの異時点間のトレードオフとはどういうことを指すのか。トレードオフという言葉は、2つのことがあるとして、あることを重視すればするほど、別の事柄が成り立たなくなる、つまり天秤がどちらかに傾いてしまう、ということを指します。

 まず第1番目に、各国の中央銀行が開始した国債、資産買入等の非伝統的金融政策は市場の急落を防ぐという短期的なメリットがありますが、一方でそうした措置が長期化・過度に拡大した場合、財政の借入が増え、経済全体における財政の位置づけが高まり、財政の役割が支配的になってしまうのではないか。民間の経済を圧迫して自律的な経済でなくなる恐れがあるということです。

 次に、企業の資金繰りに対して、政府や金融当局が各種の短期的な支援を充実...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
世界哲学のすすめ(1)世界哲学プロジェクト
日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義
納富信留
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦