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偶然が生み出す魔法――ジョブズのイノベーション哲学とは

スティーブ・ジョブズの成功哲学(6)イノベーションの起こし方

桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
概要・テキスト
常に社会にイノベーションを起こそうとしてきたジョブズは、イノベーションを起こすための会社づくりにも力を入れてきた。人びとが自然と交流できるオフィスづくりや、突出した製品を生み出すための選択と集中、また製品のプレゼンの仕方まで、そこにはジョブズの一貫した思想と実践がある。(全9話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:15
収録日:2022/03/15
追加日:2022/05/28
≪全文≫

●良いアイデアを生み出すため、オフィスにこだわっていた


―― 続いて、「ジョブズにみるイノベーションの起こし方」です。

 1番目が、「ネットワーク時代になり、電子メールやチャットでアイデアが生み出せると思われがちだ。そんなバカな話はない。創造性は何気ない会話から、行き当たりばったりの議論から生まれる。たまたま出会った人に何をしているのかを尋ね、「うわ、それはすごい」と思えば、いろいろなアイデアが生まれてくるのさ」と書いています。

桑原 ジョブズは早くからオフィスにこだわっていた人です。

―― いわゆる職場環境ですか。

桑原 そうです。よくグーグルは「エンジニアの楽園」であるとか、少人数のグループでやっているなど、いろいろなことがいわれますが、その先駆けは全部アップルです。特にマッキントッシュをつくっていたときは、本当にエンジニアの楽園のような環境をつくって、少人数でやっています。ジョブズという人は、単に優れた人を集めれば良い、お金をかければ良いというよりも、その人たちがどれだけ能力を発揮できるかにも力を入れていて、環境を整えることにも結構一生懸命だった人だと思っています。

―― 例えば、どういうことをやったのでしょうか。

桑原 この言葉は、ピクサーが新しい本社をつくるときによく言っていました。ピクサーのオフィスは、最初は孤立した小部屋や会議室を作ろうとしていたのですが、それはダメだと。人が偶然出会うようなオフィスにしなければいけないということで、真ん中に中庭のようなものを作って、そこを全部の人が行き交う、そこを通らなければどこにもいけないようなオフィスをつくりました。

 それがなぜ必要かというと、電子メールやチャットではアイデアは生まれないからだと。人が出会って、人が会話をして、いろいろなアイデアを持ち寄ってこそ、そこからイノベーションは生まれてくるのだ。だから、オフィスもそうしなければいけないというのです。

 当たり前のことですが、孤立した部屋にずっと押し込めていて、普段誰とも出会うこともないところからは、偶然の出会いは生まれない。そうではなく、イノベーションは人と人が出会って、刺激し合って生まれるのだと。それをすごく大事にしていた人です。


●イノベーションは偶然の交流から生まれる


―― なるほ...
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