テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

コロナが変えたデジタルトランスフォーメーションの動き

危機は経済を大きく変える(2)鍵はデジタル技術

伊藤元重
東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授
情報・テキスト
日本のサプライサイドを活性化し、潜在成長率や生産性を上げるにはデジタル技術が鍵になると伊藤元重氏は明言する。今まで日本企業はデジタルトランスフォーメーションには及び腰だったが、コロナ危機がその状況を一変させてしまった。象徴的なのが大学でのオンライン授業だ。大学だけでなく企業での働き方も同様で、在宅勤務やサテライトオフィスなど、働き方改革に向けての可能性が広がるだろう。(全2話中第2話)
≪全文≫

●サプライサイド活性化の鍵はデジタル技術


 さて、この時点でもう1回考えてみて、日本のいわゆるサプライサイド、潜在成長率とか、あるいは生産性を上げていくには何が必要なのか。そんなに今の中国のようにべらぼうに成長する必要はないわけですが、あまりにも低いですね、潜在成長率が。0.5パーセントポイントでも1パーセントポイントでも上げる方法はないだろうか。生産性も上げる方法はないだろうか。

 こういう形で冷静になって日本の経済を見たときに、日本の経済のサプライサイドを活性化する一番の期待できる要因は何だろうかというと、これはまず政府の政策ではない。政府の政策は重要なのですが、日本のような巨大な民間経済で、政府が何か少し動かせば見違えるように生産性が上がるような、そういう社会ではないのです。

 そう考えると、今の日本の生産性とか成長率を上げてくれる最大の原動力として期待できるものは、デジタル技術しかないのだろうと思います。そのくらい技術革新は激しく動いていて、デジタル技術によって生産性とか成長率に影響が及ぶのです。現に、中国やアメリカでもシリコンバレーが象徴的なのでしょうが、こういう所はまさにそれで経済が動いているのです。


●コロナ危機が日本のデジタルトランスフォーメーションを変える


 日本もやはりそこが重要で、そんなことは皆分かっているから何年も前からデジタルトランスフォーメーション、いわゆるデジタル技術によって経済や社会や企業を変えていくということを、やろうとしてきたのです。しかし、残念ながら日本ではこれが動かなかった。企業の経営者と話してみると、「技術は技術だけれど、経営は経営なんだよ」ということで、非常に反応が鈍かったわけです。一言でいうと、危機感が非常に弱かったのかもしれません。

 非常に皮肉なことに、コロナ危機がこの環境を変えてしまっているところがあるわけで、今やデジタルトランスフォーメーションをしっかり進めていかないと生き残っていけない、というふうに危機感を持ち始めている企業がどんどん増えているのだろうと思います。大学が一番象徴的な例で、今やZoomのようなオンライン手法を使わないと授業ができないわけで、学生は当たり前のようにパソコンをひろげてZoomでプレゼンテーションをし始めています。

 皆がなんとなく感じていることは、もちろんコロナがいずれ収まればキャンパスでの授業も始まって、オンラインとキャンパスのいわばコンビネーションになるわけですが、元には戻らないだろうということです、完全には。元に戻らないどころか、その結果として教育がかなり変わるかもしれません。

 つまり、オンライン授業でいろいろなことができるようになってくると、例えばある大学の学生がその大学の授業だけ受ければいい、ということにはならないかもしれない。もっといい授業がほかにあれば、それにアクセスできるかもしれないですし。あるいは、もっといい授業が日本ではなく外国にあるかもしれない。こういうことになってくると、いわゆる教育の質が問われてくるのです。これは結果的には大学にとっても非常に厳しい競争環境になるのだろうと思います。


●入試制度の新たな可能性を示したボッコーニ大学


 あるいは、入試制度も変わってくるかもしれません。これはお酒の席で聞いた話ですからどこまで正確かは分かりませんが、もう20年以上前の話です。イタリアでセミナーをやった時に、ミラノにボッコーニというイタリアでは非常に有名な大学があるのですが、そこの先生が言っていたのですが、「ボッコーニのあるプログラムは入試がない。極端にいえば、誰でも応募すればそのプログラムに参加することができる」と。ひょっとしたら、高校を出ていなければいけないとか、ある種の最低限の条件はあるかもしれませんが。

 その結果、何が起こったかというと、皆がそれに来たがって1万人とか2万人とかエントリーした。だから教室で授業をやろうとしても無理です。1万人を集めても大教室に入りませんから、当時ですがある種のテレビのような手法を使って授業をやることになります。学生はそれにエントリーするとテレビのようなもので授業を取りながら、いろんな課題やレポートとかを提供し、大学院生などを動員してそれを採点したりして、授業を運営するわけです。

 その中で、なかなか面白い制度だなと思ったことがあります。1年そのコースを取ると当然成績が出てきます、それはレポートで判断するわけです。2年目からそのプログラムの中で、ごく少人数の10人なのか50人なのか100人なのか分かりませんが、より絞り込んだ形でプログラムを続けるためには、成績の上位者でないと来られないという形になるのです。入試はなく、誰でも条件を満たせば授業を取れるけれども、1年目に成績をある程度...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。