需要は安泰なのか~マクロ経済の観点から考えるリスク要因
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
マクロでみる世界経済の需要と供給のバランス
需要は安泰なのか~マクロ経済の観点から考えるリスク要因
伊藤元重(東京大学名誉教授)
今、日本もアメリカも需要は強いが、供給が追いつかない状態にある。このように需要が景気を引っ張っている場合、一度それが減退すると経済失速に陥りかねない。マクロ経済の観点から、世界経済の需要と供給のバランスを分析し、現実問題として需要がくずれる2つのリスク要因について解説する。
時間:12分11秒
収録日:2018年11月14日
追加日:2019年1月5日
≪全文≫

●日本の経済は需要が強いが、供給がついてこない


 私は、マクロ経済の状況について、一つ重要なキーワードがあると思っています。それは需要と供給ということです。全ての経済現象には需要と供給の両面があり、そこをしっかりと見ていくということが重要なのですが、マクロ経済についても同じことが言えます。結論からいえば、日本の経済は需要が強いということです。それが景気を支えているのですが、供給がついてこないという大問題があります。

 経済学を勉強した方はよくご存じと思いますが、マクロの需要は専門用語で「総需要」といいます。非常に単純化すれば、消費や投資、あるいは公共投資のようや政府支出や輸出から輸入を引いた純輸出などの、内需や外需がどのように動いていくかという需要サイドのことです。


●十分に拡大してこなかった日本の供給サイド


 もちろん、景気が堅調に展開していくためには需要が十分になければいけません。消費が強いとか、投資が経済を刺激するとか、あるいは外需が良好であるといったことが必要で、経済が少し厳しい時には、公的需要の公共投資や政府支出が増えていくということになります。日本は安倍内閣が発足してから5年、もうすぐ6年目になりますが、この間、需要はある意味で非常に成功してきたといえます。

 ただ、マクロ経済には供給という面があります。実際に消費や投資、あるいは公共投資のような財やサービスの需要に対応するためには、それに応じたモノやサービスの供給が行われなければなりません。そのモノやサービスが供給されるためには、労働力だとか資本、さらに言えばそういうことを支えている技術革新や生産性の上昇、こういったものの裏付けがないといけないわけで、これが供給サイドです。

 残念ながら、日本の供給サイドはやはり十分に拡大してこなかったといえます。象徴的なことを一ついえば、これだけ経済を刺激してきたにもかかわらず、潜在成長率はまだ1パーセントいくかいかないかという非常に低い水準が続いているのです。潜在成長率というのは、今お話しした資本や労働や、あるいは生産性の上昇から推計される日本の中長期の成長の実力のようなことを表しています。これが非常に低いということは、今後いくら需要の刺激を続けたとしても潜在成長率が上がらないということで、経済がなかなか伸びていかないことを意味します。


●潜...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(1)国家に経営理念があれば、もっと日本は発展する
無限の可能性に挑め…国家経営を創造し、新時代の憲法を!
松下幸之助
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
徳と仏教の人生論(4)克己と天壌無窮
横井小楠が説く「世界の幸せのお世話係」こそ日本の使命
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(5)社会的共通資本によるプラチナ社会へ
「日本に来れば未来が見える」…希望があるうちにやろう!
小宮山宏
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
ショパンの音楽とポーランド(8)ポーランドの苦悩と革命のエチュード
ポーランド分割、11月蜂起…革命のエチュードの真意とは?
江崎昌子
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(4)エンタメで一番重要なのは「人」
変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人
水野道訓