『孫子』を読む:軍争篇
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
正々堂々の敵は避けるべし…気・心・力・変を治める重要性
『孫子』を読む:軍争篇(5)4つの治め方と戦闘上の法則
田口佳史(東洋思想研究家)
戦いのポイントとして「気」「心」「力」「変」という4つを挙げ、それらを治めることの重要性を説く孫子。それぞれどのようなことなのか。そして、最後に戦巧者として「してはいけない」という戦闘上の法則を挙げて締めくくる軍争篇の最終話。まさに現代のマーケティング戦略に十分活用できる戦術が述べられているのだ。(全5話中第5話)
時間:10分04秒
収録日:2020年6月16日
追加日:2023年12月18日
カテゴリー:
≪全文≫

●「気」「心」「力」「変」を治めることの重要性


 その次の「是の故に朝氣は鋭く、晝氣<ちゅうき>は惰<おこた>り、暮氣は歸<かえ>る」ですが、いいことを言っています。そして「故に善く兵を用ふるものは、其の鋭氣を避け、其の惰歸<だき>をうつ。此れ氣を治むるものなり」と言っていますが、気を治める者、心を治める者、力を治める者、変を治める者、というように、4つの治め方をここで挙げてくれているのです。このようなところも、孫子の分かりやすさです。

 まず、気を治めることが重要だと言っています。それは何かというと、この世には気の変化ということがあり、それを戦略にうまく活用することが重要だと言っているわけです。そういう意味で、朝の気は鋭いと言っているのは、夜十分に睡眠を取ってきて、全軍がこれから戦うと言っているのですから、それは気が鋭く、さあやってやろうという気持ちになっています。では昼(晝)はどうなのかというと、ちょっと惰<おこた>りの気になって、さらに暮れ時になると人間の心は、労働は昼で、夕方になるともう働くというよりも家に帰って食事をしたいというような里心がついてしまうわけです。軍隊といっても人間集団ですから、そういう人間の習性は逃れられません。

 したがって、朝の気は鋭く、昼気はちょっと鋭さを失って、暮れてくると家へ帰りたくなるような状況になります。ですから、「善く兵を用ふるものは、其の鋭氣を避け、其の惰歸をうつ」ということは、敵を攻めるときは敵もこちらと同じように朝はやる気十分なので、それは避けたほうがいいわけです。ではどうすればいいかというと、睡眠時間をちょっと遅らせて、こちらは昼に起きるのです。敵はいつも朝起きていますから、昼気は惰りという状態で、さらにいえば、こちらは夕暮れ近くになってから起き上がって攻めるわけです。つまり、こちらは鋭気で向こうは惰気という状態を作れということです。これを「氣を治むるものなり」と言っているのです。

 次の「治を以て亂<らん>を待ち、靜を以て譁<か>を待つ」ですが、この「治を以て亂を待ち」というのは、こちらはしっかり気持ちを治めて、理路整然として、それで撹乱戦術、つまり敵を撹乱して、敵が乱れてくるのを待つということです。それから「靜を以て譁」...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治