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実は「風林火山」には大事な続きが…「此れ軍争の法なり」

『孫子』を読む:軍争篇(4)「風林火山」に続く大事な教え

田口佳史
東洋思想研究家
情報・テキスト
風林火山――『孫子』の軍争篇に出てくるこの言葉は戦国武将・武田信玄の旗指物として有名だが、実はこの後に「知り難きこと陰の如く…」と続く言葉が重要だと田口氏は言う。それこそが「此れ軍争の法なり」すなわち戦争をするときの法則ということで、集団を一致団結させるための方策とともに具体的に解説を進めていく。(全5話中第4話)
時間:09:16
収録日:2020/06/16
追加日:2023/12/11
カテゴリー:
キーワード:
≪全文≫

●「風林火山」のあとが重要――此れ軍争の法なり


(次の)「故に其の疾きこと」は、速くパッとやることですが、1人であれば速くできても、軍隊という集合体として速くやらなければいけないわけですから、そのためにも訓練が第一なのです。

 そのような点で次に、「其の疾<はや>きこと風の如く、其の徐<ゆるや>かなること林の如く、侵掠<しんりゃく>すること火の如く、動かざること山の如く、知り難きこと陰の如く、動くこと雷震の如く、郷に掠<かす>めて衆を分ち、地を廓<ひろ>めて利を分ち、權を懸けて動く。先づ迂直の計を知る者は勝つ。此れ軍争の法なり」といっています。

 ここで皆さんがよくご存じの「疾きこと風の如く、徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如く」とあり、このくらいはよく知っているのですが、このあとから分からなくなるようです。

 このあとが重要ですが、まずここでは、「疾風(怒濤)」という言葉があり、そのようなことです。それから「徐か」というのは、落ち着いて静かに行くことで、さらに林のように堂々と行かなければいけないのです。それから「侵掠」は、ザーッと侵略していくような、まさに火が走っていくようなことです。そして、ここは動いてはいけないというときは、ドーンと山のように動かないということです。

 そして次が重要で、「知り難きこと陰の如く」というように、全軍がどのように分かれて、どのように攻めてくるのか、まったく分からないのは、敵軍にとってはこれほどの恐怖はないのです。そのような意味で、「知り難きこと陰の如く」の「陰」は、陰<かげ>で隠れて見えないという意味もあり、陰陽の陰ということで、これも見えないという意味です。それから「動くこと雷震の如く」は、動き出したら雷のように猛烈な勢いで攻めてくることで、そのような迫力がなければダメだといっています。

 さらに「郷に掠めて衆を分かち」とは、全て現地調達をしなければいけないということです。ですから、不足なものがあったら現地で調達するという、現地調達係もロジスティックの役割ですから、そういう意味で「郷に掠めて衆を分ち、地を廓<ひろ>めて利を分ち」というように、地を割ってそこにある物品も活用していくということです。

 それから、「權を懸けて動く」ですが、権とは軽重のことで、何が重要で、何が大したものではないのかという価値判断です。「ここはばかばかしいけれども、このようなことをしなければならない」とか、「ここはそんなことをやっているときではない、正々堂々とやらなくてはいけない」ということです。「権を懸けて」というのは、ものの軽重をしっかり量らなければならないということで、敵が仕掛けてくるときに、それをいつも馬鹿正直に受けていてはダメだという意味です。そのようなことは放っておいたほうがいいという部分もあるわけです。

 そのような意味で、「迂直の計を知る者は勝つ」のです。「迂直」とは戦略のことで、戦略をしっかりしなければいけないのです。そして「此れ軍争の法なり」ですが、「軍争の法」というのは戦争をするときの法則で、これを忘れてはいけないといっています。


●現代も旗や太鼓が人心を一にする


 その次、「軍政に曰く、言ふこと相聞えず、故に金鼓を爲<つく>る」です。戦場では、兵士に「左へ」「右へ」「進め」などと言っても聞こえませんから、それらを通達できるように、「金鼓を爲る」ということで、当時は鉦<かね>や太鼓でやりました。

 例えば、太鼓がドンドンドンと鳴っていれば「進め」で、ドーンドーンと鳴っていれば「引き下がれ」というように、太鼓でそれら全部を表したのです。相撲などでも触れ太鼓というものがあり、これから始まりますという太鼓のことで、終わったときの太鼓が跳ね太鼓で、それぞれ違います。そのように、音で知らせるということはとても重要なことなのです。

 そして「視ること相見えず、故に旌旗<せいき>を爲<つく>る、と」といっています。この旗指物がどうしてあるのかというと、敵味方が分からなくなってしまうからで、1人1人の兵士は必ず旗指物を背中につけて敵味方をはっきりさせるわけです。

 それから「夫れ金鼓・旌旗は、人の耳目を一にする所以なり」ですが、鉦や太鼓、あるいは旗指物というのは、人の心を一にするのです。前に「人の和」という話がありましたが、この和の気持ちにすることが重要なのです。

 今でいえば何かというと、これは白旗棒とかハチマキのことです。例えば今、何もそのような意識がない人間の集団がいて、その集団を一致団結させるためにどうしたらいいのかというと、同...
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