『孫子』を読む:軍争篇
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「風林火山」には続きが…「知り難きこと陰の如く」の意味
『孫子』を読む:軍争篇(4)「風林火山」に続く大事な教え
田口佳史(東洋思想研究家)
風林火山――『孫子』の軍争篇に出てくるこの言葉は戦国武将・武田信玄の旗指物として有名だが、実はこの後に「知り難きこと陰の如く…」と続く言葉が重要だと田口氏は言う。それこそが「此れ軍争の法なり」すなわち戦争をするときの法則ということで、集団を一致団結させるための方策とともに具体的に解説を進めていく。(全5話中第4話)
時間:9分16秒
収録日:2020年6月16日
追加日:2023年12月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●「風林火山」のあとが重要――此れ軍争の法なり


(次の)「故に其の疾きこと」は、速くパッとやることですが、1人であれば速くできても、軍隊という集合体として速くやらなければいけないわけですから、そのためにも訓練が第一なのです。

 そのような点で次に、「其の疾<はや>きこと風の如く、其の徐<ゆるや>かなること林の如く、侵掠<しんりゃく>すること火の如く、動かざること山の如く、知り難きこと陰の如く、動くこと雷震の如く、郷に掠<かす>めて衆を分ち、地を廓<ひろ>めて利を分ち、權を懸けて動く。先づ迂直の計を知る者は勝つ。此れ軍争の法なり」といっています。

 ここで皆さんがよくご存じの「疾きこと風の如く、徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如く」とあり、このくらいはよく知っているのですが、このあとから分からなくなるようです。

 このあとが重要ですが、まずここでは、「疾風(怒濤)」という言葉があり、そのようなことです。それから「徐か」というのは、落ち着いて静かに行くことで、さらに林のように堂々と行かなければいけないのです。それから「侵掠」は、ザーッと侵略していくような、まさに火が走っていくようなことです。そして、ここは動いてはいけないというときは、ドーンと山のように動かないということです。

 そして次が重要で、「知り難きこと陰の如く」というように、全軍がどのように分かれて、どのように攻めてくるのか、まったく分からないのは、敵軍にとってはこれほどの恐怖はないのです。そのような意味で、「知り難きこと陰の如く」の「陰」は、陰<かげ>で隠れて見えないという意味もあり、陰陽の陰ということで、これも見えないという意味です。それから「動くこと雷震の如く」は、動き出したら雷のように猛烈な勢いで攻めてくることで、そのような迫力がなければダメだといっています。

 さらに「郷に掠めて衆を分かち」とは、全て現地調達をしなければいけないということです。ですから、不足なものがあったら現地で調達するという、現地調達係もロジスティックの役割ですから、そういう意味で「郷に掠めて衆を分ち、地を廓<ひろ>めて利を分ち」というように、地を割ってそこにある物品も活用していくということです。

 それか...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
片山杜秀
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾