『孫子』を読む:行軍篇
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文と武の両輪――仁愛の精神と厳しさでリードせよ
『孫子』を読む:行軍篇(6)信頼関係の構築
田口佳史(東洋思想研究家)
上司と部下の信頼関係はどのように築いていけばよいのか。これは、いつの時代にあっても難しい問題である。また、軍隊でも会社でも組織の大きさより、内部がいかに整っているかが、目標を達成するための最大要因でもある。鍵となるのは、文と武の両輪、つまり仁愛の精神と厳しさをもってリードすること。最終回の講義では、信頼関係を築いて組織を統率していくための方策について説く。(全6話中第6話)
時間:9分35秒
収録日:2020年10月9日
追加日:2025年2月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●1+1を3に高めることの意味とは


 その次、「兵は多きを益とするに非ざるなり」です。ここでビシッといっているのは、軍隊というのは大軍が一番いいというものではないということです。なぜなら「惟武進する無かれ」、大軍だから勇ましく、前進あるのみといって進んでいくものではないということです。さらに「以て力を併せ敵を料るに足りて、人を取るのみ」といっています。

 ここで重要なのは、どのような軍隊でもやらなければいけないのは、味方の兵力を合わせてということで、つまり1人の力ともう1人の力を合わせると3人前にならなければ意味がないのです。掛け算になっていかなければ、意味がありません。そういうものが力というものです。ですから、心を合わせ、目的を合わせ、全てを合わせ、さらにもう1つは、自分のほうのことです。自分のほうのことの一番重要なのは、力を合わせるということです。

 それができたら、今度は敵をはかることです。敵の実情もしっかり入れて、それで攻めれば、「人を取る」、つまり敵軍を攻め取ることができるということです。ただ兵が、軍隊が大軍だからというのは、それに甘んじてあぐらをかいてしまうから、かえって危険だということもあると、ここではいっているわけです。

 そして「夫(そ)れ惟慮無くして、敵を易(あなど)る者は、必ず人に擒(とりこ)にせらる」ですが、「夫れ惟慮無く」は、何の憂いもない、深い配慮がないというもので、敵を侮り、俺たちは前進あるのみで行くなどと、威勢はいいのですが、それは敵を侮っているということですから、「必ず人に擒に」、捕らえられて捕虜になってしまうということをいっているわけです。


●ルーズとタイトの戦略を重視する


 そこで最後のところです。「卒未だ親附せずして之を罰すれば、則ち服せず」ですから、だんだん話は敵軍の情報をしっかり取れということです。これはずっと今までいってきました。やはり問題は、組織の内部の充実にかかっているということを、ここでいっているわけです。

 最後の、「卒未だ」ですが、自分が上司で、部下がまだ親附しない、将軍に謹んでついてくるということをしない前に、罰則ばっかり施行してしまうと、もうその段階で服従しなくなるということです。

 これは現代の企業組織などを見...

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