『孫子』を読む:行軍篇
平々凡々も大事、慎まなくてはいけないのはヤンチャな行動
『孫子』を読む:行軍篇(2)4つの地形での戦い方:後編
哲学と生き方
田口佳史(東洋思想研究家)
前回に続き、戦いにおける4つの地形、その環境の具体的な注意点を示し、それらをビジネス戦略や人生の局面に応用する方法を解説していく第2話。川、沼地、平地、そして高地においての戦いの要点が語られているが、広い視野を持つ、優位なポジションを確保するという重要性は大変参考になる。また、平穏なときは危険を避け、安定を重視すべきという教訓も学んでいく。(全6話中第2話)
時間:8分08秒
収録日:2020年10月9日
追加日:2025年1月12日
収録日:2020年10月9日
追加日:2025年1月12日
≪全文≫
●有利なポジションをいかに取っていくか
そして、「戦はんと欲すれば、水(かわ)に附きて客を迎ふる無かれ」で、本当に戦おうと思ったら、川について敵を迎えるなどということはしてはいけないのです。次の「生を視て高きに處る」は、つまり生きようと思ったら、川というのはなるべくさっと渡って、高いところへ行くことです。
高いところがなぜいいのかについては2つ要点があり、1つは見渡しが良くみんな見えます。なにしろ敵軍の状況がよく見えたほうがいいわけですから、そういう意味で高いところがいい。それから前にもいったように、高いところは日射しがあればとても(良く)、冬の戦いなどのときには、寒いところに陣がある軍と、暖かいところに陣を張っている軍とでは全然兵力が違って、戦力がまったく違うと、当時はいわれたものなのです。
ですから、これはどうしても早く高いところに(いくべきということで)、「高きに處(お)る」なのです。
次は「水流を迎ふる無かれ」で、簡単にいうと、川の中で戦ってはいけないのですが、どうしても戦うというときは、川上から来る敵を川下で受けるなどということは絶対やってはいけないのです。川の流れというものが敵に味方してしまうからです。こちらのほうはハンディキャップがあります。ですから、必ず自分たちが上流の側に回るようにしなければいけないということです。
これは人生孫子でいえばどういうことかというと、やはり転換というときはいつも、全体的な状況において有利なポジションを取っていくことを心がけ、不利な状態にならないということが非常に重要なのです。
ですから、転換をうまくやろう、イノベーションをうまくやろうというときには、やはり不利になる状態をしっかり見越して、こういう状態になってはいけないというのを出して、そうならないようにさっとやってしまうことが重要です。「此れ水(上)に處るの軍なり」(は、そういうことです)。
●問題が起きたら小さいうちに解決する
次は「斥澤(せきたく)を絶(わた)れば」で、これは沼地です。足は取られ身動きできなくなります。「斥澤を絶れば、惟亟(すみや)かに去りて留まる無かれ」です。こういうところはさっと過ぎなければいけない。川というところもさっと引き揚げたほうがいいのですが、中でもこの斥澤の沢と...
●有利なポジションをいかに取っていくか
そして、「戦はんと欲すれば、水(かわ)に附きて客を迎ふる無かれ」で、本当に戦おうと思ったら、川について敵を迎えるなどということはしてはいけないのです。次の「生を視て高きに處る」は、つまり生きようと思ったら、川というのはなるべくさっと渡って、高いところへ行くことです。
高いところがなぜいいのかについては2つ要点があり、1つは見渡しが良くみんな見えます。なにしろ敵軍の状況がよく見えたほうがいいわけですから、そういう意味で高いところがいい。それから前にもいったように、高いところは日射しがあればとても(良く)、冬の戦いなどのときには、寒いところに陣がある軍と、暖かいところに陣を張っている軍とでは全然兵力が違って、戦力がまったく違うと、当時はいわれたものなのです。
ですから、これはどうしても早く高いところに(いくべきということで)、「高きに處(お)る」なのです。
次は「水流を迎ふる無かれ」で、簡単にいうと、川の中で戦ってはいけないのですが、どうしても戦うというときは、川上から来る敵を川下で受けるなどということは絶対やってはいけないのです。川の流れというものが敵に味方してしまうからです。こちらのほうはハンディキャップがあります。ですから、必ず自分たちが上流の側に回るようにしなければいけないということです。
これは人生孫子でいえばどういうことかというと、やはり転換というときはいつも、全体的な状況において有利なポジションを取っていくことを心がけ、不利な状態にならないということが非常に重要なのです。
ですから、転換をうまくやろう、イノベーションをうまくやろうというときには、やはり不利になる状態をしっかり見越して、こういう状態になってはいけないというのを出して、そうならないようにさっとやってしまうことが重要です。「此れ水(上)に處るの軍なり」(は、そういうことです)。
●問題が起きたら小さいうちに解決する
次は「斥澤(せきたく)を絶(わた)れば」で、これは沼地です。足は取られ身動きできなくなります。「斥澤を絶れば、惟亟(すみや)かに去りて留まる無かれ」です。こういうところはさっと過ぎなければいけない。川というところもさっと引き揚げたほうがいいのですが、中でもこの斥澤の沢と...