『孫子』を読む:軍争篇
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勝利は二の次!?…利を考えない「孫子の兵法」の妙
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迂直の計――不利を有利にするための「軍争篇」の教え
『孫子』を読む:軍争篇(1)人の和と「迂直の計」
田口佳史(東洋思想研究家)
戦争の巧者についての教えを説く『孫子』「軍争篇」。冒頭の「和を交へて舎するに」を注意深く見たほうがいい。孟子の「天の時、地の利、人の和」を引いて、天の時、地の利に匹敵するくらいに「人の和」が重要だといっているのだ。そして、戦闘において不利を有利にするために最大のポイントは「迂直の計」にあるという。どういうことなのか。軍争篇を読み解きながら具体的に解説を進める。(全5話中第1話)
時間:11分10秒
収録日:2020年6月16日
追加日:2023年11月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●天の時、地の利と同様、人の和を重視する孫子の教え


 今回は軍争篇のお話を申し上げます。

 「孫子曰く、凡そ兵を用ふるの法、將、命を君に受け、軍を合はせ衆を聚<あつ>め、和を交へて舎するに、軍争より難きは莫<な>し。軍争の難きは、迂を以て直と為し、患を以て利と為せばなり。故に其の途を迂にして、之を誘<いざな>ふに利を以てし、人に後れて發<はっ>し、人に先んじて至る。此れ迂直<うちょく>の計を知る者なり」

 「孫子曰く、凡そ兵を用ふるの法」、これはいつも出てくる言葉です。戦争の巧者、つまり戦争をして勝つ人は、命令を君子から受けて、軍を合わせ、これは聚合といって、みんな軍を合わせ、そして兵士を集め、と言っていますが、主にこの頃は職業軍人という人は少数でしたから、一般の民衆が集まるわけです。

 そして、「和を交へて舎するに」とありますが、このようなところも注意深く見たほうがいいわけです。何気なく読んでしまうと、ただみんなで仲良く交じり合って、「舎す」というのは宿営することで、軍隊ですから官舎にみんな集めてそこで寝起きするということです。

 しかし、「和を交へて」とわざと言っている。これは、『孫子』の一番最初に「天の時、地の利」というのが出てきますが、「道天地将法」というのが計篇の一番最初に書いてあります。道<みち>と書いて道<どう>、それから天、地、将、法と書いてあります。これを孟子は何と言っているかというと、天の時、地の利。それで孫子は次に将と言って現場の長が重要だと言っています。

 (一方)孟子は、天の時、地の利、人の和と言っていますから、儒家の思想の考え方では、天の時、要するにタイミングとして、自軍が戦争をするのに一番打ってつけの非常に有利に戦えるときであるかどうか、もう少し比較的にいえば、どちらに天の時の利があるのか敵軍と自軍を比較しろと言っているわけです。

 それから、天の時、地の利と言っているように、地の利ということは、戦闘する場はどちらが有利なのかということをよく考える必要があります。出会ったら戦うわけではないのです。要するに、戦略的にどこで戦ったら自分に一番有利かという、戦闘の場というものを設定して、そこに敵軍を誘導するということが重要なのです。

 ですから、今の時代でいいますと、マーケティン...

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