労働基準法の精神
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日本が当面する5つの労働課題
労働基準法の精神(5)当面する五つの課題
古賀伸明(日本労働組合総連合会(連合)第6代会長/公益社団法人国際経済労働研究所 会長)
日本労働組合総連合会(連合)第6代会長の古賀伸明氏が労働法について解説するシリーズレクチャー。第5回では、当面の課題を5つのポイントに整理して解説する。課題は柔軟な働き方、技術革新への対応、雇用類似など多岐にわたるが、いずれに対しても国や企業全体が一丸となって、法整備やシステム構築に取り組むことが求められている。(全6話中第5話)
時間:14分21秒
収録日:2018年6月25日
追加日:2018年9月24日
≪全文≫

●柔軟な働き方に伴う課題


 次に、当面する課題についてお話しします。

 まず1点目は、柔軟な働き方についてです。私は、これについて、トレンディな働き方といった点がいささか強調されすぎているのではないかと感じています。いわゆるテレワークは、時間や場所を有効に活用し、子育て、介護などと仕事の両立が可能になり、ワーク・ライフ・バランスも実現できるなどのメリットがあるといわれています。このことを否定はしません。しかし、一方では労働時間の管理、労働災害の認定、人事評価の在り方などの課題や、自営型テレワークについては注文者や仲介業者との間で、さまざまなトラブルに直面しているとの指摘があり、十分な環境整備が必要です。

 また、現在、政府は副業・兼業を後押ししています。 しかし、そもそも働く者にとって、就業時間外の時間をどう使うのかは本人の自由であり、政府の姿勢には率直に言って違和感があります。副業・兼業を行う人の中には、生活費補填のためにやむを得ずマルチジョブをせざるを得ない人もたくさんいると思われます。こうした人たちが健康で働き続けることができるためには、長時間労働にならないよう現行の労働時間ルールを遵守し、労働時間の管理を厳格にすべきです。そして、セーフティネットをもうけ、最低賃金を上げていく。こういったことが重要ではないでしょうか。

 さらに、副業・兼業には労災保険、社会保険、労働保険の適用問題など、法的課題も山積しています。副業・兼業を行う労働者の像は、どうしても高いスキルで年収の多い人が想定されがちですが、やむを得ずマルチジョブをせざるを得ない人がいることを直視し、その視点で法的保護の在り方を検討すべきです。


●雇用類似の働き方は実態の把握が必須


 当面する課題の二点目は、雇用類似の働き方です。近年、今述べた柔軟な働き方だけでなく、自営型テレワークやフリーランスといった、雇用関係によらない働き方も注目されています。

 多様な働き方の一つとして、クラウドワーキングなど、雇用契約によらない働き方による仕事の機会が増加しており、自営型(非雇用型) テレワークをはじめとする雇用類似の働き方が拡大しています。労働法の保護を受けることができず、半ばノールールで働くという非常に弱い立場に置かれている雇用類似の働き手の法的保護の在り方は、今後の労働政策のメインテーマ...

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